太平洋戦争で最も無謀といわれたインパール作戦は、戦死者約3万人を出す惨憺(さんたん)たる失敗に終わった。食料や兵器の補給を軽視し、作戦を主導した司令官を誰も止められなかった▼英領だったインド北東部の2千メートル級の山系を徒歩で越える強行軍。部下からは異論も出たが「果敢な突進こそ戦勝の近道」とする司令官は聞く耳を持たず、その上司も許容した▼旧日本軍の組織に関する研究書「失敗の本質」は、客観的情勢を過小評価し、人間関係を重視して司令官に強く意見できなかったことが作戦中止を遅らせたと指摘する。あらゆる組織に当てはまりそうな教訓だ▼悲惨な戦争とは比べようもないが、導入見送りとなった大学入学共通テストの記述式問題を巡る混乱にも同様の短慮が感じ取れないか。膨大な数の答案を短期間で採点するのに学生アルバイトまで想定した計画は、入試実務をあまりに過小評価していた▼文部科学省は採点ミスの恐れなどの課題を早くから認識していたようだが、見送りの判断は遅れた。萩生田光一文科相は「時々の大臣は、時々の環境でベストを尽くした」と先輩らを思いやっている▼安倍晋三首相は先週、インパールを訪ねて献花する予定だったが延期された。自らの政権にも通じる教訓を学ぶ機会を逸したのかもしれない。