総務省事務方トップの先輩後輩による前代未聞の不祥事だ。

 かんぽ生命保険と日本郵便の保険不正販売問題を巡り、行政処分案の検討状況を日本郵政グループに漏らしたとして、鈴木茂樹総務事務次官が事実上更迭された。

 情報を漏らした相手は元総務次官の鈴木康雄日本郵政上級副社長である。2人はともに旧郵政省の採用という。天下りによる癒着そのものではないか。

 公務員は守秘義務を持つが、総務省と郵政グループはもたれ合っていた。情報漏えいが常態化していた可能性もありそうだ。

 不正販売による顧客への背信にとどまらず、行政の信用を大きく失墜させた責任は重い。

 かんぽ生命と日本郵便は郵便局の信用を逆手に取って保険商品を不正販売していた。先ごろ公表された特別調査委員会の報告書によると、組織的な不正が強く疑われる実態が浮かんでいる。

 その行政処分についての情報が事前に伝えられていた。

 うみを出し切り、信用回復へ踏み出すため、郵政グループには経営体制をはじめ抜本的な組織立て直しが必要だ。

 それなのに、こんな癒着を見せつけられては、不正販売問題にまじめに向き合う姿勢があるとはとても言えない。

 誰が漏えいを持ちかけたのか、これ以外にも漏えい事案はなかったか―。総務省には徹底した調査が求められる。

 郵政民営化の当初から、総務省は経営に強い影響を持ち続けてきた。天下りで経営陣に幹部を送り込むのは旧郵政公社時代からの手法だ。今回の漏えいも、こうした関係が温床となったとみられる。

 鈴木副社長はかんぽ不正問題の特集番組を放送したNHKに対する抗議を主導し、その際も自身の経歴を誇示していたという。

 国は民営化の途上にある日本郵政の筆頭株主だが、監督する立場でもある。人事を含めた関係の在り方について、改めて考えなくてはならない。

 民営化後も日本郵政の自主性は乏しい。取締役の認可権を総務相が持ち、グループ3社トップには政府が事実上選んだ民間経営者が就任している。

 官僚の天下りはこれまでも省庁と企業の癒着を生み、問題が繰り返されてきた。

 郵政民営化を推進しながら、長年にわたって天下りを容認してきた政治の責任も問われる。行政をゆがめる人事は抜本的に見直すべきだ。