【今回の相談】
義父は山の中腹に住み、車必須の生活です。買い物や通院はもちろん、生きがいとしている趣味の畑仕事にも車が必要です。

そんな父も75歳を迎え、咄嗟の判断も鈍ってきています。そこで、運転免許証を返納してほしいと思っているのですが、免許証を返納すると生きがいの畑仕事も断念しないといけなくなったり、また買い物などの重い荷物を持って急な山道を登るという過酷な生活になることを考えると、本格的に父に運転免許を返納するよう言いづらいです。

住みなれた家からふもとへ引っ越しするのも嫌がっています。遠く離れた他府県に住む私は手伝うこともできないので日々心配です。

私が心を決めて、免許証を返納するよう父にうまく説得するにはどうしたらよいでしょうか?(40歳・女性)

 

 

■「自分の意志で返納を決めた」と感じられるように
難しい、そして、本当に考えないといけない問題。ご相談ありがとうございます。
僕も、毎日車に乗る生活をしているので、明日は我が身の「免許返納」。どのタイミングで返納すればいいのか、考えることすら先延ばしにしたい気持ちになります。
でも、いざ、考えてみると、あることに気がつきました。「誰かに、返納のタイミングを教えてもらえるだろう」という気持ちではなく、「いやだなあ、僕もいつか、周囲から取り上げられるのかな」という気持ちが明らかにあるということ。同時に、僕は子どももいないので「誰も言ってくれないまま、大きな事故になったりしたら嫌だな」という気持ちも見つかりました。

結論から言えば、「誰かに取り上げられるのではなく、自分の意思で、少し早く車の免許を返納できるとかっこいいなあ」というのが、僕自身のこの問題に対する気持ちのように思います。
そのことを柱に相談に答えるなら、あくまで「自分の意志で免許返納を決めた」と感じられるようにしてあげることが、一番大切だと思います。

まずは、返納について考える時期が来ていることをお父さんと共有できるか。「俺を老人扱いするのか!!」と怒らせてしまっては元も子もありません。少し早めの対応をしていこう、と誘ってみるのもいいかな。そして、どんなことが不便になるかを一緒に想像してみること。もし車がなかったら、タクシーを使わないといけないケースは月に何回くらいあるか、費用はいくらくらいかかるか。車だと便利だけれど、自分の足で歩いたり、公共交通機関を使えばなんとかなるケースはどれくらいあるか。近くにいる家族や友達は、どれくらいのフォローができるか。

ちょっとしたゲーム感覚でいろいろシュミレーションしてみるのです。「ふんだんにお金があれば全部タクシーにするよね、いくらかかるかな?」なんて、贅沢な自分たちを想像してみる。想像だけならお金は要らない。
お金がかかると言っても、車のガソリン代も駐車場代も修理も車検も税金も無くなるので、相殺すると、その額は想像より少ないかもしれません。
出来るだけ楽しく、お父さんのプライドを傷つけないように、自分の意思で免許を返納してもらう。でも、この作戦の裏には、少しシリアスな問題が隠れているようにも思います。

年を取ることによって鈍ってしまう判断能力が引き起こすかもしれない事故。「自分がこけて軽い怪我する」「物忘れをして困ってしまう」というような生活の中にある笑える失敗ではなく、命を落としたり奪ってしまう可能性がある問題を、運転免許を返納することで回避しようとしている。そのことを忘れてはいけないのだなと思うのです。

■衰え受け入れる覚悟を

車はたしかに便利なものです。そして技術開発によって、運転はさらに簡単になり、安全面も充実してきている。それでもやっぱり、私たちの能力を超えた不釣り合いな力を、時に私たちに与えてしまう道具かもしれません。コンロトールできていると感じた時代があるから、その不釣り合いを受け入れられない。便利なものを手にすると、それを持つ前の生活に立ち返るのはなかなか難しい。
でも、自分たちの衰えを受け入れて、その能力に合わせて不便さもまた受け入れていく覚悟が必要なのだと思う。そのために、一見損にしか思えないような人生設計を応援したり、かっこいいと感じたりする感性を、自分自身も社会も持つべきなのだと思います。

年末年始、里帰りの予定はありますか。あなたとお父さんがゆっくり顔を見て話せる時間を持てるといいな。
参考にならなかったかもしれないけれど、お父さんへの愛情を感じる相談ありがとう。いい結果が生まれますように。

【今回のアンサーソング】

「カッコよく言いたいんだよ」
作詞作曲:原田博行

自分のことは自分で決めるよ
でも少しだけ手伝ってくれるなら嬉しいな
プライドが邪魔して 気づかなかったり
自分のことは本当は 分からないから
やっぱり最後は自分で決めったって
カッコよく言いたいんだよ
カッコよく言いたいんだよ


サウンドロゴ・クリエイター、シンガーソングライターにして現役高校教師の原田博行(ハラダヒロユキ)が、あなたの悩みに答える歌をギター1本で弾き語り、歌えば人生のヒントが見えてくる!?⇒お悩みの応募は(haradise@mb.kyoto-np.co.jp)まで。