軽度認知障害(MCI)を公表する宇治市の海老澤三千世さん(62)が、旧友の岩井雅実さんと音楽活動を始めた40代の頃に作詞した歌をレコーディングした。1月にCD制作の記念ライブを開く▼物忘れでミスが増え、当時の仕事を辞めて4年前に診断を受けた。違う物を買ったり、約束をしづらかったり「簡単なことができなくなるのが怖かった」という▼今は工夫と音楽が日々を豊かにする。まめにメモを取り、連絡はメールの文字情報で。「手帳は書き込みで真っ黒。秘書と呼んでます」。ライブも「仲間とやれるうちに。聴く人の心に残れば」と続ける▼MCIを公表した転機は昨年、若年性認知症の丹野智文さん(仙台市)の講演を聴いたことだった。「認知症でもできることはたくさんある。皆で支え合う社会をつくろう」。海老澤さんは「私に役立つことがあれば」と福祉系の催しで経験を率直に語るようになった▼恋の歌が多い。「あの頃たくさん思っていた そしてたくさん思ってくれた その気持ちを思い出せたから だから今夜は優しくなれた」。今も、思い浮かんだ言葉のかけらを書き留めているという▼仕事やアート、スポーツを続ける認知症の人は多い。海老澤さんが紡ぐ言葉、歌声にこれから背を押される人たちが、きっといる。