必要性が疑わしく、政権の独断で行うのは危うい。

 中東地域への海上自衛隊の派遣を政府が閣議決定した。日本関係船舶の安全確保に向けた情報収集を強化するというのが理由だ。

 アラビア半島南部の海域に護衛艦1隻を送り、アフリカ・ソマリア沖での海賊対処活動に当たるP3C哨戒機も活用する。1月中に活動を始めるとしている。

 派遣の法的根拠とした防衛省設置法の「調査・研究」は、防衛相の命令だけで実施でき、国会の承認を必要としない。

 遠く離れた中東で隊員の安全や武器使用のリスクがありながら、国会での議論を避ける「抜け道」を使った派遣は疑問だ。自衛隊の海外活動が歯止めなく広がる懸念が大きい。

 政府は、海自派遣を「日本の独自活動」と強調するが、自国船舶の防護を求めるトランプ米大統領の意向に沿ったのは明らかだ。

 一方、友好国のイランにも配慮し、米国主導でイラン沖・ホルムズ海峡の安全確保を掲げる有志連合には参加せず、同海峡やペルシャ湾での活動は避けた。

 中東に原油輸入の8割以上を頼る日本が「何もしないわけには」という苦肉の策には違いない。

 ただ、日本の海運会社が運航するタンカーが襲われた6月以降、関係船舶への攻撃はない。緊迫していない状況で部隊派遣の法的制約をくぐるため、条文が曖昧な「調査・研究」を持ち出した感は否めない。

 調査・研究は領海侵入への警戒監視の根拠にもされているが、日本近海が前提で、海外派遣は拡大解釈だとする批判が根強い。

 情報収集目的のため船舶警護はできない。政府は、不測の事態には警護ができる海上警備行動を発令するとしているが、武器使用は正当防衛と緊急避難の範囲内だ。警護対象は日本籍船のみのため日本の海運会社が関わる船舶の約1割しかなく、安全航行の確保という目的はかすむ。

 派遣期間は1年間で、国会に対して延長や活動終了の際に報告を義務付けたが、なし崩し的な派遣拡大への十分な歯止めとはいえない。

 先週来日したイランのロウハニ大統領は「日本の意図を理解している」としたが、いっそう情勢が緊迫化すれば、米側と情報連携する派遣部隊が敵視される恐れは拭えない。

 外交努力による緊張緩和を働きかけてきた日本の立ち位置も揺らぎかねない。