行く年を思う日だ。ひどい災害や事件が相次いだ1年だが、ラグビーW杯と流行語になった「ワンチーム」が醸した一体感のようなムードが、多くを覆い包んだ感がある▼海外出身15人を含む31選手のチームプレーは共生社会の理想形とも賞されたが、首相はじめ政財界リーダーがあちこちで「ワンチームで」と言いだすと眉につばをつけたくなる。都合のいい同調圧力に感じる▼チーム精神を表す似た言葉が「ワンフォーオール・オールフォーワン」だろう。「1人は皆のため、皆は1人のため」という学園ドラマの合言葉でもあったが、後段を「皆は一つの目的のため」とする説明を耳にするようになった▼どちらの翻訳が正しいかは別に、結束するには皆で成し得る目的が重要だろう。ただ、チームは同じ競技や事業を行うため集まったり、花見に招いたりする仲間内だけではない▼会社や地域、日本というチームは、一人一人の目的や考え方が違う。地球チームで温暖化防止という目的と行動を共にするにも、砂漠化や水没に直面する各地の訴えに皆で応えようとしなければ叶(かな)わない▼W杯代表の稲垣啓太選手は「ワンチームになるのは簡単じゃない」と振り返り、母校凱旋(がいせん)で「思いやりが大切」と伝えた。やはり「皆が1人のため」が伴ってこそだろう。