令和初の大みそかを迎えた。

 元号が新しくなることを新時代の到来だとするなら、多くの試練とともにあったスタートだったような気がする。

 元号が変わった頃、相次いだのが「子どもの受難」だ。

 川崎市でスクールバスを待っていた児童らが包丁を持った男に襲われ、2人が死亡し、18人が重軽傷を負った。男は自殺し、動機は分からないままだ。

 大津市では散歩途中の保育園児らが車の事故に巻き込まれ、2人が死亡、14人が重軽傷を負う痛ましい事故があった。

 子どもという最も守られるべき存在が犠牲になった。防ぐ手だてはなかったのか。

 児童虐待事件も後を絶たない。私たちの社会の在り方を改めて考えずにはいられない。

 京都アニメーション放火殺人事件が起きたのは7月だった。

 多くのヒット作を生み出し、世界中にファンを広げた日本を代表するスタジオである。多くのクリエーターが働く現場で、男がガソリンをまいて火をつけた。

 「理不尽な暴力」なぜ

 36人が亡くなり、33人が負傷した。過去に例のないような事件に大きな衝撃が走った。

 重体だった容疑者は会話を交わすまで回復したが、本格的な調べは来年以降とみられる。

 なぜ、こんな理不尽な暴力が行われたのか。それが社会の闇を映しているなら、向き合っていかなくてはならない。

 一方で同じくらい強い印象を残したのは、国内外で支援や追悼の輪が大きく広がったことだ。

 八田英明社長は「信じられないほど多くの人たちが私たちに想いを寄せてくださっていることを知りました」と感謝した。

 地元にこんなスタジオがあることに初めて気付き、誇らしく思った人もいるだろう。夢と希望を届けてくれたスタジオの再起を願わずにはいられない。

 京アニの存在が世界に知られたのは、主にインターネットを通じてだったとされる。

 世界はつながっている。同時多発的に起こる異常気象からも強くそのことを実感させられた。

 今年も大きな自然災害が繰り返された。9月に台風15号が千葉県に上陸し、同県を中心に最大約93万戸が停電した。

 1カ月後には台風19号が関東から東北を縦断。各地で河川が氾濫し、死者は90人を超えた。

 温暖化の脅威現実に

 年の瀬を迎えても現場には生々しい傷跡が残り、被災者はなお厳しい状況に置かれている。

 短くて急勾配の川が多い日本は治水対策に長年取り組んできたはずだ。それでも想定を上回るような異常気象に、追いつかない現実が浮き彫りになっている。

 これまでとは違う、新たな発想が求められるのではないか。

 スペインであった国連気候変動枠組み条約第25回締約国会議(COP25)でドイツの環境シンクタンクが、前年の2018年に世界で気象災害の被害が最もひどかったのは日本だと公表した。

 世界有数の被害国である日本は温暖化対策に率先して取り組むことが期待されているが、石炭火力発電への依存を続ける姿勢に批判が集中している。

 COP25に参加した小泉進次郎環境相は脱炭素化を確実に進めていくと訴えたが、具体的な行動を示せなかった。

 言葉ばかりで中身が伴わない。今の日本の政権を象徴しているようにも見える。

 民主主義の土台崩れ

 安倍晋三首相が主催した「桜を見る会」について、世論調査で「首相が十分説明しているとは思わない」と答えた人は実に83・5%に上った。

 疑惑がクローズアップされたころ、首相の通算在職日数は歴代最長となったが、しらじらしく思った人もいたのではないか。

 長期政権のおごり、緩みが指摘された。以前の森友・加計学園などと同じような問題が繰り返されている。

 特に国民の財産である公文書がずさんに扱われ、政権の都合が優先されているのは深刻だ。

 民主主義の土台が崩れている。政権の在り方に根本的な欠陥があると疑われても仕方ない。

 少子高齢化や地方の衰退、格差拡大と生きづらさ…課題は山積したまま持ち越されている。

 そうした中、新時代を思わせるような明るいニュースもあった。最たるものはラグビーワールドカップの盛り上がりだろう。

 多国籍で臨んだ日本代表チームの姿に、社会の進む方向を感じた人も多かったのではないか。

 外国人の就労を拡大する改正入管難民法が4月に施行された。訪日客も増え続けている。

 多様性を大事にする新たな日本社会を世界に示せるだろうか。

 世界に誇る仕事をした緒方貞子さん、中村哲さんが亡くなった。大切なことは何なのか、2人が教えてくれるようだ。

 東京五輪・パラリンピックの来年は、改めて日本の新時代が問われるだろう。それには何より、中身が伴わないといけない。