「お正月と云(い)えば炬燵(こたつ)を囲んで お雑煮を食べながら 歌留多(かるた)をしていたものです」―。改めて書くとユニークな歌詞だと思う。伝説的な日本のロックバンド、はっぴいえんどの「春よ来い」▼1970年に発表したデビューアルバムの1曲目に収められた。家を出た若者が、都会で1人迎える正月に孤独を思っている。除夜の鐘がさびしいと嘆きながらも、春に向けて何かやってみようと歌う▼学生運動があり、若者文化が注目された時代の心象風景があったのかもしれない。それから、ちょうど半世紀。令和最初の正月に広がる風景には、何が映っているのだろう▼あなたの家の近くの店はどうか。コンビニやスーパー、飲食店などで休業する例が増えている。働き方改革の波に乗って、少しだけ昔のように、のんびりした年初ではないか▼<元日や手を洗ひをる夕ごころ>。よく知られる芥川龍之介の句は、特別な日の夕暮れに抱く感慨を詠んでいる。1人でいるのは若者だけではない。孤独のかたちも夕ごころも、多様化している▼正月といえば―。それに続く言葉は今や人それぞれだろう。「正月の定義は困難」と、どこかの政権なら言いそうだ。それでも春を待つ心は変わらないと思いたいが、温暖化でそれすら心もとない2020年の幕開けである。