疑惑に正面から答えず、資料を要求されると「遅滞なく廃棄した」。批判に対しては「何ら問題はない」で押し通す-。

 昨年末に持ち上がった「桜を見る会」を巡る国会質疑で繰り返された光景は、森友・加計学園疑惑をほうふつとさせた。

 不都合な出来事を「なかったこと」にして葬ろうとする姿勢からは、国民の代表としての誇りも責任感も感じられない。

 これが、歴代最長となった安倍晋三政権の現実である。

 官僚の人事権や選挙の公認権を握り、省庁や与党を支配する「1強」の下、安倍氏に意見する身内の勢力はほとんどない。

 政治のたがが外れたまま、新しい年を迎えた。行政府の行きすぎを立法府がチェックできない現状は、政党の役割に反省を迫っていよう。議会制民主主義は危機にひんしている。

 私たちの願いが国政に届いているとは思えない。民意を政治に反映できる回路を、早急に再生する必要がある。

 昨夏、首相側近が、低調な憲法改正論議と衆院議長の交代論を結びつける発言をした。官邸が国会を下請け機関のようにみなしている象徴といえた。

 その国会も、桜を見る会や老後2千万円問題を巡って野党が求めた予算委員会の開催を与党が拒み続けるなど、国民の前で議論する姿勢を欠いていた。

 少子高齢化が進み、経済格差も広がっている。「全世代型」と銘打った社会保障に関する議論は深まらず、景気の先行きを不安視する声は根強い。

 国民生活に直結する課題に、政治が答えていない。安倍氏が意欲を示す改憲は優先順位の高い政策テーマとはいえない。

 難しい課題を先送りせず、国民目線に立って謙虚で着実な政権運営を求めたい。

 政治の再生へ鍵を握るのは、まず野党結集への動きだ。

 立憲民主党や国民民主党などの合流協議が本格化しよう。政治理念や基本政策を一致させるハードルは高いが、与党に対抗できる旗を立てられなければ現状を変えることはできまい。

 昨年の参院選では「1人区」で野党の選挙協力が一定の成果を挙げた。ただ、れいわ新選組の躍進は、弱者救済などの政策課題を、既存政党が見落としていた現実も示した。

 国民の将来を見据え、踏み込んだ政策を練り上げていく知恵と努力が各党とも欠かせない。

 問題は有権者の心に響くかどうかだ。昨春の京都府議選、京都市議選、滋賀県議選はいずれも投票率が過去最低だった。参院選も過去2番目に低かった。

 「1強」政治の下で何を言っても無駄-と有権者に思わせているのなら、政治の罪は重い。投票への参加で未来は変わると訴えることができるかどうか、与野党ともに問われている。

 安倍首相の自民党総裁としての任期は来年9月、衆院の任期満了は同10月だ。政権運営にあたっては総裁4選や衆院解散への思惑も焦点となろうが、国民の存在を忘れてはなるまい。

 有権者も政治をあきらめず、各党の主張に耳を傾けたい。