ただの偶然だと思いたい。手前みそで恐縮だが、ゴーン被告の逮捕を受けた一昨年11月の当欄のことだ▼人気アニメ「ルパン三世」でルノーの車が出てくる場面を引き合いに書いた。それから1年余り。まさかの海外逃亡に「まるでルパン」との声が出ていて変な気分になる。保釈時におかしな変装をしていたのは前兆だったのか▼それでなくても五輪開催で世界の注目が集まる年である。こけにされた日本の捜査当局は国際刑事警察機構(ICPO)を通じて身柄拘束を求めているようだ。「ICPOの銭形だ」と、またルパンの場面が浮かんでしまう▼ゴーン被告は8日に記者会見を予定しているという。人質司法など日本の制度を批判している。有罪率99%と聞いて裁判の公平性を疑いたくなるのはやむえない面もあるかもしれない▼「ルパン」はもともと1970年代的なアンチヒーローの話だが、人質司法や有罪率は今日的な課題だ。むしろ刑事弁護を描いた近年の人気ドラマ「99・9」を思い出す人も多いのではないか。だからといって、逃げていいとはならない▼泥棒なのに映画などでは、より巨大な悪を相手に正義の人のようになるルパン。そこに作劇の妙もあるのだろうが、もちろん現実は違う。ゴーン被告は日本の司法を敵に正義を語るのか。