岡山市内のショッピングモールで、大勢の観客の前で技を披露する自転車BMXフリースタイル・パークの中村輪夢選手

岡山市内のショッピングモールで、大勢の観客の前で技を披露する自転車BMXフリースタイル・パークの中村輪夢選手

愛車にまたがる中村輪夢選手と父辰司さん。二人三脚で東京五輪でのメダル獲得を狙う(京都市右京区)

愛車にまたがる中村輪夢選手と父辰司さん。二人三脚で東京五輪でのメダル獲得を狙う(京都市右京区)

 昨年11月、自転車BMXフリースタイル・パークのジャパンカップが行われた京都向日町競輪場(向日市)。大音量の音楽が流れ、選手たちがジャンプ台の上を走って宙返りや回転技を繰り出す。優勝したのは、日本人初のワールドカップ年間王者に輝いた中村輪夢(りむ)(17)=京都市右京区。技の難易度と高さで圧倒し、最後に呼び掛けた。「来年もBMXを盛り上げましょう!」


 東京五輪では、BMXフリースタイル・パークや3人制バスケットボール、サーフィン、スポーツクライミング、スケートボードが新競技・種目となる。若年層に人気の都市型(アーバン)スポーツで、「五輪離れ」に危機感を抱く国際オリンピック委員会が、若者を引きつける切り札として採用した。
 「いつも『楽しそうにやってるね』と言われる」。中村は東京五輪の金メダル候補に名前が挙がるが、勝敗だけに固執しない。「ベストの走りをして結果が出なければ、練習すればいい」。楽しみながら成長することに価値を見いだす。

■「怒る必要ある?」

 空中で両手を離したかと思えば、ハンドルや車体を回転させる。技の数々はネットの動画や会員制交流サイト(SNS)に投稿された映像を参考にする。昨年12月には豪州で海外勢と練習した。「できない技を教え合う感じ」と、ライバルとの距離感を表現する。
 自主性を大切にしてきた。「好きでやるからうまくなれる。指導者から叱られることも悪くないと思うけど、それで競技が嫌になってしまうのは一番あかん。高校野球とかを見ていると『そこまで怒る必要ある?』って思う時がある」
 中村の考えの根底には、今もメカニックとして帯同する父の存在がある。BMXの選手として活躍した辰司(44)は、3歳から自転車に乗る息子が競技を楽しく続けられるよう「恐怖心との向き合い方を教えた」と話す。幼少期は小さなジャンプ台がある神戸や大阪へ出向き、体を守るプロテクターを全身に着けさせた。押しつけるような指導はせず、技が決まると目いっぱい褒め、身の入らない練習は叱った。父は「走りそのものにはあまり口は挟まない」と笑顔を見せる。

■ストイックな姿勢も

 「苦難に耐えて勝つ」という従来の選手像とは違った価値観を持つように見える中村だが、ストイックな姿勢も併せ持つ。「一つ一つの技を完璧にしないと新しい技はできない」と、練習では1日6時間も自転車をこぎ続ける。世界トップクラスのジャンプは高さ6メートルにも達し、危険とも隣り合わせだ。昨年9月には米国で転倒して脳しんとうを起こし、「出番前から救護室に運ばれるまでの記憶がない」という。
 スタイリッシュで娯楽性を強く発信する都市型スポーツ。五輪の競技になることに違和感を抱くスポーツ関係者もいるが、新たな選手像とともに2020年を機により注目度が高まれば、他競技の選手や指導者のスポーツに対する向き合い方、見る側、支える側の価値観をも変える可能性がある。
 中村は言う。「BMXの認知度はまだまだ。東京五輪をきっかけに有名になり、『かっこいい』とか『やってみたい』って思う人が増えればハッピー」=敬称略

<シリーズ:ゆらめく聖火 東京五輪の風>