イランの革命防衛隊の精鋭部隊を率いるソレイマニ司令官が隣国イラクで米軍の空爆を受けて殺害され、イラン情勢は極めて危険な局面に入った。

 イランは「軍事報復」を明言しており、米は報復された場合は52カ所を攻撃するとしている。報復の連鎖が武力衝突に発展する恐れが現実味を帯びている。

 両国に強く自制を求めたい。国際社会は沈静化へ最大限の努力をしてほしい。

 米政府は革命防衛隊をテロ組織に認定しており、空爆は「イランの攻撃計画を防ぐことが目的」と主張する。だが証拠も示さず、予防を口実に殺害するのはあまりにも強引ではないか。イラクも主権侵害と言っている。

 昨年6月に米国の無人偵察機が撃墜された際、トランプ氏は一時承認した軍事攻撃を10分前に撤回した。今回も好戦的な発言を重ねている。

 イランや北朝鮮に対する政策で手詰まり感が強まり、自身のウクライナ疑惑もある。11月の大統領選に向けて国民の目をそらし、「戦果」をアピールする狙いがあるのは間違いない。

 だが米国内では報復を懸念する声が噴出し、中央情報局(CIA)の元長官は「イランとの戦争のリスクが高まった」と断言した。

 米の勝算は見えず、人的被害を拡大させる可能性がある。浅はかな判断と言わざるをえない。

 長年の多国間外交の末に成立した「イラン核合意」は瀕死(ひんし)の状況となっている。イラン政府は合意から段階的に逸脱する第5弾の措置として、無制限にウラン濃縮を進めると発表した。

 核合意からの一方的な離脱に続き、今回の事態を招いたトランプ政権の責任は重大だ。とはいえイランが再び核開発に突き進めば、国際社会の理解や同情が失われることになる。

 イラン国内でも強硬派の発言力が高まっている。核合意が崩壊すれば隣国イラクも欧州も脅威にさらされる。各国は沈静化へ働きかけを進めている。

 米、イラン双方と良好な立場にある日本は、衝突回避への努力が求められる。

 政府は先ごろ、中東地域への自衛隊派遣を閣議決定した。イランに配慮して米国主導の有志連合には参加しないが、米国との一体化がより疑われる恐れがある。

 中東情勢の緊迫化で、派遣の前提が変わったといえる。そもそも派遣は国会の承認を経ておらず、改めて議論し直すべきだ。