愛される優雅さ

 1919年、「此上(このうえ)なき美術品」を作りたいとの思いで創設された陶器工場があった。大倉孫兵衛(まごべえ)・和親(かずちか)父子による「大倉陶園」は、フランスのセーブル、イタリアのジノリなど欧州王室御用達の名窯に比肩し得る洋食器製造を目指して東京に創業した(60年に横浜市に移転)。

「一本のバラ」プレート(部分) 1990年 大倉陶園蔵 撮影:鈴木心

 それから100年。柔らかな白、澄んだ青、品格ある金彩、そしてバラや星、月などの繊細なデザインは国内外で愛されてきた。細見美術館(京都市左京区)の企画展は、大倉陶園の100年を通じて日本洋食器の魅力を伝え、洋風文化の歴史をひもとく。

京都迎賓館食器揃 2005年 京都迎賓館蔵

 出版や製陶を手がける企業家・大倉孫兵衛が大倉陶園を創設した頃、日本は宮中晩餐(さん)会でも輸入洋食器を使っていた。大倉陶園は基本の生地をはじめ、漆蒔(うるしまき)や岡染めなど装飾技法にも工夫を重ね、日本独自の美を生み出した。

貴賓用特別食器揃(満州国皇帝溥儀を迎えるに際し製作)1935年 奈良ホテル蔵

 華麗な器は内外の博覧会や展覧会で評価を得、皇室が購入、官公庁も貴賓接待の食器を大倉陶園に用命した。展覧会では皇室のディナーセットも展示される。奈良ホテルは満州国皇帝溥儀(ふぎ)を迎える際、特製セットをあつらえた。

魚 1935~45年 個人蔵
魚 1935~45年 個人蔵

 洋風文化にあこがれる当時の社会も大倉の器に魅了された。ホテルや高級レストランが買い入れて非日常の空間を演出した。

色蒔デミタス碗皿 1935~45年 東京村田コレクション

 昭和の激動期も「良きが上にも良きものを」の理念で乗り越え、優雅さと創造性を保った。次の100年はどうだろうか。大倉陶園の美と価値観は、日本近代史上の多くの文化の象徴でもある。

「天文十二月」プレート 7月 1994年 個人蔵
「天文十二月」プレート 8月 1994年 個人蔵
「天文十二月」プレート 9月 1994年 個人蔵


□会期 1月7日(火)~3月29日(日)月曜休館(祝休日の場合は開館し、翌火曜休館)
※前期(2月16日まで)と後期(2月18日から)で展示替えあり
□開館時間 午前10時~午後6時(入館は午後5時半まで)
□会場 細見美術館(京都市左京区岡崎最勝寺町)
□主催 細見美術館、京都新聞
□入館料 一般1400円(1300円)、中高生・大学生1100円(1000円)
※かっこ内は20人以上の団体料金。小学生以下は無料

関連イベント
□ギャラリートーク「奈良ホテルと大倉陶園」 1月18日、2月22日午後2時。 辻利幸・奈良ホテル副総支配人。入館料が必要
□アートサロン「大倉陶園のお話とティータイム」 2月15日午後1時。黒澤学氏(大倉陶園)。有料、申し込みが必要
□気軽にお茶会体験「洋食器のミニ茶会―大倉陶園のうつわで楽しむ」 3月8日午前11時、午後1時、3時。有料、申し込みが必要
□問い合わせ 細見美術館075(752)5555