市役所のお金

市役所のお金

 年明け早々の8日、京都市役所の一室に市幹部らがこもった。協議しているのは、2020年度予算編成だ。

 市の年間予算は計1兆7千億円。「財布」は17個もある。最大の一般会計のほか、市バスなどの企業会計が四つ、国民健康保険などの特別会計が12ある。18年度決算をみると、一般会計には億を超える数字がずらりと並び、他の会計でも国民健康保険1449億円、市バス227億円と多額のお金が使われている。
 市民などから集めた巨額の財源の使い道はどうやって決まるのか。動きだすのは前年の秋頃。財政担当の部局から配分された予算の枠内で、各局が事業を取捨選択する。新規・充実事業に充てる予算は各局からアイデアを募り、財政担当の部局が必要性を判断する仕組みだ。
 副市長、市長の査定を経て予算案が固まるのは1月下旬ごろ。もちろん、市長の意向は強く働く。「二条城内の舗装を急ぐべき」。局が当初要求しなかった予算が市長の指示でつくこともある。「夢のある予算編成を」。市長の口癖だ。
 だが、市の「財布」には、あらかじめ潤沢な資金が用意されているわけではない。
 「巨額の財源不足が見込まれる」。19年秋、市職員の一人は20年度一般会計予算編成に関する副市長からの通知文を読んでため息をついた。8千億円近い一般会計の規模に対して、約300億円も足りないという。「必要な事業ばかり。広く薄く予算を削るしか手がない」。担当者の悩みは深い。
 19年度予算では、新規・充実枠の10事業にお金がつかなかった。道路のひび割れ補修もその一つ。普段から実施している事業だが、予算ではバス停周辺19カ所の道路補修を一気に実施すべく、担当部門は8900万円を要求していた。「必要性はわかるが、今ある予算で工夫して」。財政の担当者はにべもない。「爪に火をともす」(市幹部)ほど財政は苦しい。
 そもそも「1兆円企業」のはずの京都市で、なぜお金が足りないのか。地方自治体の共通の課題として、予算に占める自前の税収(市税)が少なく、使途が決まっている国の補助金や次世代の負担となる借金に頼っているためだ。さらに、京都市は他の政令指定都市よりも学生や高齢者の割合が高く、市民1人当たりの市税収入は約19万8千円と、大阪市と比べて約7万2千円も少ない。
 市は01年、景気の低迷などによる財源不足に直面して「財政非常事態」を宣言した。職員数を大幅に減らし、09年から2年半は全職員の給与をカットした。実は、今も宣言は解除されていないが、市幹部は「市民はもちろん、役所内でも危機感は共有されていない」と嘆く。
 暮らしを豊かにする「夢」と財政難の「現実」のはざまで、どの支出を減らし、どこから収入を確保するか。私たち有権者が選び、「財布」を預ける市長の判断が、京のまちの行方を左右する。

■進む人口減、京都も急激に 2015年147万人⇒2045年129万人

 人口が急激に減り、少子高齢化が進む。日本の将来を取り巻く大きな課題は、大都市である京都市も例外ではない。そのトップを決める京都市長選の告示まで、10日を切った。
 国立社会保障・人口問題研究所の推計では、京都市の人口は2015年の147万人から45年には129万人に落ち込む。15~64歳は62%から54%に減る一方、65歳以上は26%から36%に増え、5人に1人が75歳以上の後期高齢者になる。
 18年の出生数は9984人で、ついに1万人を割った。さらに近年、市中心部では地価の高騰もあり、20~30代の子育て世帯が転出。観光や文化で世界から注目を集め、京都市の「都市格」は向上したが、将来を見据えると足元はおぼつかない。
 高齢化で社会保障費など市の支出がますます増える一方、人口減で収入の先行きは見通せない。財政運営が厳しさを増す中、持続可能な社会をどうつくるか。市民に最も身近な市役所の「かたち」を見つめ、京の未来を探りたい。

◇京都市長選連載「京都市のトリセツ」