水産用コンテナに取り付けられた進入禁止を呼び掛ける紙。奥の防波堤には釣り人が10人以上いた(宮津市大島・養老漁港)

水産用コンテナに取り付けられた進入禁止を呼び掛ける紙。奥の防波堤には釣り人が10人以上いた(宮津市大島・養老漁港)

 京都府北部の海には京阪神エリアから多くの釣り人が訪れる。一方で漁業者や住民からはごみの放置や無断駐車などへの苦情が絶えず、対策も地域ごとにまちまち。市町をまたいだ広域的な釣り人へのマナー啓発が欠かせない。

 宮津市の養老漁港では、ごみや駐車問題に加え、停泊中の漁船への無断立ち入りや、船と岸壁をつなぐロープに引っ掛かった釣り針で漁業者がけがをする被害が出ている。漁港の管理を市から委託されている府漁業協同組合養老支所によると、多い時期で1日100人近い釣り人が押しかけることもあるという。

 マナー悪化の原因は何か。宮津市須津の釣具店「フィッシングナカジマ」の中嶋和輝店長は、会員制交流サイトや動画投稿サイトで釣れる魚の情報だけを得て、地域のルールを知らずに訪れる人の存在を指摘する。「ある釣り場で閉め出されても、釣り人は他の釣り場に行ってしまう。以前は『この時期はカニ漁で漁港は忙しい』といった情報を釣り人とコミュニケーションできていたのだが」と話す。

 舟屋が立ち並ぶ景観で知られる伊根町伊根地区。ここも釣り人のごみや騒音、無断駐車などのトラブルを抱えていた。町は2017年に有料駐車場の整備に踏み切った。釣り人の利用が主となる夜間の料金は2倍だが、無断駐車は減ったという。

 しかし、依然としてマナー問題は残る。有料駐車場に併設されたトイレに釣りに使う餌や、釣れたイカのスミを流すなどの行為も見られるという。吉本秀樹町長は昨年12月の町議会一般質問で、漁港周辺で釣りエリアと禁止エリアを分ける可能性に言及したが、伊根漁港以外は小規模で、分けることは難しいとの認識も示した。

 こうした中、民間レベルの啓発活動も行われている。同釣具店は昨年12月、釣り具メーカーなどと協力し、メバル釣りを楽しみながら釣り場のごみを拾うイベントを開催した。日本釣振興会は毎年、舞鶴市の竜宮浜漁港で海中清掃を行い、今年からは伊根町でも実施を検討。加えて町内4カ所でのマナー啓発看板の設置も町と進める。

 釣りは地域にとって貴重な観光資源でもある。静岡県熱海市では06年、熱海港の防波堤を柵の設置などの安全対策を講じて一般開放。この防波堤はかつて立ち入り禁止で、立ち入った釣り人が高波にさらわれる事故も発生していた。現在は多くの釣り人が訪れ、釣った魚を市内の食堂に持ち込むと調理してもらえる取り組みも進んでいる。市や県熱海土木事務所は「逆転の発想」と説明する。

 釣りを楽しむ場所は住民の暮らしの場そのものであり、漁港は漁業のための施設だ。一部の釣り人のマナーの悪さによって、平穏な生活と観光振興の両立の芽をつむようなことがあってはならない。