駅や空港に置かれ、誰でも自由に弾ける。そんなストリートピアノが近年増えてきた。JR京都駅にも昨秋からお目見えし、今は7階東広場に期間限定で置かれている▼年初に訪ねてみると、60代の女性がショパンの名曲を奏でていた。聞けば、愛知県で合唱団の伴奏をしており、いろんなタッチのピアノに慣れておくために巡っているとか。楽しみ方は人それぞれである▼2008年に英国で火が付き、世界に広がったとされる。日本では11年に鹿児島市の商店街に登場したのが早い例だが、最近のブームはNHKBS1の番組の影響もあるようだ。海外各地の演奏風景を定点カメラで見つめ、音楽を巡る人間模様をシリーズで伝えてきた▼外国人旅行客や学生、会社員、高齢の愛好者ら多種多様な人々が演奏し、終われば拍手や対話も自然と生まれる。国籍や老若男女といった違いを超え、音楽で緩やかにつながる交流は魅力的だ▼そんな姿に刺激され、長く離れていたピアノを再開する人も少なくないと聞いた。中には表現の場として活用し、演奏の動画をネットにアップして話題を集めるピアニストもいる▼「音楽は人生の暗い夜の月明かりである」と言った小説家がいる。世界が分断を深める中、人々を音の彩りで結ぶストリートピアノの広がりである。