性教育で使う資料を示すあかたさん。「性の話は人間の話、人生の話です」と力説する(京都市左京区・京都精華大)

性教育で使う資料を示すあかたさん。「性の話は人間の話、人生の話です」と力説する(京都市左京区・京都精華大)

 「性」という言葉から何が連想されるだろう。性別、性器、性行為…?
 「いやいや、多くの人がきゅーっと狭く考えるけど、人生の話のすべてが入ります」
 あかたちかこさん(39)は性教育で府内外の中学や高校に出向く。妊娠や避妊、性病など内容は多様だが、伝えたいのは単なる知識ではなく、日常や将来との地続き感。だから、セックスの前の恋愛、さらにその手前の人間関係の話から始める。
 「大事なのは、自分のことは自分で考えて決め、2人の幸せは2人でしっかり話し合うこと。後悔の少ない、いい感じの生き方をしてほしいから」


 かわいくあれ、笑っていろ、口を出すな―。思春期の頃、世に溢れる「女らしさ」の押しつけが嫌だった。京都精華大に入り、社会問題化していたエイズに関する授業が、今の活動につながる。
 薬害エイズ訴訟の原告やゲイ雑誌の編集長ら講師陣の真剣な姿に、「他から強制されない自己決定の自由と、思い込みという自分からの自由」を感じた。「性を語ると、その人のありのままが出て面白く、はまった」とも言う。やがて、学校でエイズ予防の講演をするように。社会的・心理的性別であるジェンダーの問題を含め、話すテーマや場所はどんどん広がった。
 現在は大学で教べんを執るほか、児童自立支援施設で性教育の講師、保健所ではエイズ関連のカウンセラーを務める。「性とその周辺のなんでも屋さん」を名乗り、「どこでも部外者だから、当たり前でないことに気付ける」と話す。
 昨年、男女平等の度合いを示す「ジェンダー・ギャップ指数」で日本は121位と過去最低だった。「物事を決める場に女性が少なすぎる」。実際、大学や行政などでも格差を痛感し、差別的な発言に接したこともある。
 一方、変化も感じる。セクハラや性暴力被害を訴える「#MeToo」運動のうねりに加え、同性愛や性同一性障害といった性的少数者(LGBT)関連の報道や講演依頼がぐっと増えた。「少数者やしんどい立場の人が生きやすい社会は、多数者も生きやすい。当事者や声を聞いた者が動くことで変わってきたし、その流れは止められない」
 今日も性を見つめ、考え、語り合う―。誰もがその人らしく、「いい感じ」と思える世の中を目指して。

【プロフィル】

 大阪市出身、現在は京都市北区在住。京都精華大と大阪人間科学大で非常勤講師を務め、専門は対人援助学。学校や地域などでの性に関する講演は、多い月で15回ほど。性教育の教員指導や教材開発にも携わる。NHK教育の番組「バリバラ」に出演、国内外で行われるLGBTやエイズ関連のパレードにも積極的に参加している。