極めて危険な展開だ。全面衝突は避けなくてはならない。

 イランが、米軍の駐留するイラクの空軍基地など2拠点を十数発の弾道ミサイルで攻撃した。先日のソレイマニ司令官殺害に対する報復である。

 大規模反撃を警告してきたトランプ大統領はツイートで「被害状況の精査を進めているが今のところ良い方向だ」と被害が限定的だったとの認識を示し、改めて声明をまとめて発表するとした。

 米国の対応が焦点だ。反撃すればイランは再び報復する構えをみせている。報復の連鎖が続いて衝突が拡大し、中東全体に飛び火する恐れもある。

 両国とも全面衝突は望んでいないという。これ以上衝突を重ねることになれば、引き返すのがますます困難になる。改めて双方に強く自制を求めたい。

 トランプ氏はもともと中東からの米軍撤収を目指していた。緊張を高めても何のメリットもないことを思い起こすべきだ。

 イランは司令官の一連の葬儀が終了し、喪が明けた直後に攻撃を仕掛けたとみられる。今回は「第1段階」とし、米国の同盟国に対しても米国に協力すれば反撃の標的となると警告する。

 司令官殺害に対する国民の反発は大きく、報復を実行しないと収まらなかったのかもしれない。あえて限定的にした可能性もあり、ここで思いとどまってほしい。

 現在の状況を招いたトランプ政権の責任は重大だと言わざるを得ない。「司令官が大規模な攻撃を計画していた」と主張しているが、詳細は明らかにしていない。国際法上の正当性を疑問視する声も上がっている。

 トランプ氏は大統領選を意識したとみられるが、内外で大きな反感を招いていることを自覚しなくてはならない。

 対立が激化すれば世界経済への影響も免れない。

 ニューヨーク原油先物相場は一時8カ月半ぶりの高値を付けた。各国の株式相場は軒並み下落した。

 国際社会は沈静化へ最大限の努力を続け、両国に働き掛ける道を探ってほしい。

 日本政府は態度を明確にしていない。自民党には「同盟国である米国の立場を支持するべきだ」との意見があるが、緊張緩和へ向けた役割こそが求められる。

 中東への海上自衛隊派遣も「現時点で方針の変更はない」(菅義偉官房長官)というが、考え直すのは当然だ。