2016年に相模原市の知的障害者施設「津久井やまゆり園」で入所者ら45人が殺傷された事件で、殺人罪などに問われた元職員植松聖被告(29)の裁判員裁判の初公判が横浜地裁で開かれた。

 被告は起訴内容を認め、おわびを口にしたが、直後に暴れ出し、被告不在のままで審理が再開する波乱の始まりになった。

 障害者が狙われ、19人もの命が奪われた事件は社会に大きな衝撃を与えた。

 被告は逮捕後も「重度障害者は社会からいなくなった方がいい」などと主張し、殺傷行為を正当化してきた。

 今後の公判では、被告の刑事責任能力の有無や程度が最大の争点となるが、被告が障害者に対する差別感情や憎悪を増長させた経緯や背景をどこまで解明できるかも焦点となろう。

 被告は12年12月にやまゆり園で働き始め、16年月には衆院議長公邸を訪れて施設の襲撃を予告する手紙を渡すなどしていた。施設を自主退職し、精神障害治療の措置入院から退院して4カ月後の同年7月26日に事件を起こした。

 措置入院時に「大麻精神病」と診断され、逮捕後も大麻の陽性反応が出ていた。初公判で弁護側は、被告は事件当時、精神障害で心神喪失か心神耗弱の状態だったとして無罪を主張した。

 罪に問えるかや量刑の判断が裁判の主題ではあるが、公判では、何が被告の偏狭で独善的な考えにつながったかに迫る努力を怠らないでほしい。

 事件後、インターネット上には被告に共感する書き込みがみられた。一昨年には自民党の国会議員が性的少数者(LGBT)のカップルについて「『生産性』がない」などと寄稿し批判を浴びた。

 障害者をはじめ社会的弱者や少数者に対するゆがんだ差別意識が、格差社会の中で増幅していると言わざるを得ない。こうした意識が、相模原の事件を生み出した背景にあるのではないか。

 公判では、障害者への差別や偏見を懸念する遺族らの意向を踏まえ、横浜地裁が被害者名を明らかにせずに審理することを決めた。

 被害者保護が目的とはいえ、わが子やきょうだいが「甲A」などの記号で呼ばれることに違和感を持つ遺族らもいる。それでも匿名にせざるを得ない遺族や被害者の苦しみは、障害者が置かれている現状を物語っていよう。

 裁判は私たちにも共生の意味を問いかけている。