朝鮮半島に、またも危機をもたらすつもりなのだろうか。

 北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が昨年末、「新たな戦略兵器」の使用を予告する演説を行った。

 その兵器が何を意味するかは不明だが、核実験や大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射実験を中止するとした「公約に縛られる根拠はなくなった」とも述べている。

 核・ミサイル増強を続ける強硬路線に再びかじを切ったように見える。軍事的緊張が再燃しよう。

 演説では、米国が北朝鮮への敵視政策を続けていると批判し、新たな活路を開くため「正面突破」を図ると宣言した。

 だが、金氏が頼みとする米朝協議が進展しないのは、国際社会が求める非核化の具体策に北朝鮮が踏み込まないためだ。譲歩しないまま強硬な姿勢をとり続けても、米側が軟化する可能性は低い。

 米朝間で非核化の定義すらできていないのが現状だ。双方の隔たりを埋める実務協議を軌道に乗せる努力が、まず必要ではないか。

 北朝鮮は一昨年、それまでの経済建設と核戦力建設を同時に進める路線から、経済建設に集中する方向へ路線転換した。しかし、トランプ米大統領との3回にわたる首脳会談でも事態は動かず、経済制裁も緩和されていない。

 金氏が再び強硬路線を掲げた背景には、手詰まり感を打開したいとの思惑があるのだろう。

 先月末に外務次官が「クリスマスプレゼントに何を選ぶかは米国の決断次第」と挑発したが、結果的にミサイル発射はなかった。

 金氏が党の総会で「政治外交、軍事的対応措置」を準備するとした発言については、文言の使い方などから米国の出方を探っているのではとの見方も出ている。

 北朝鮮にも迷いがあるようだ。

 ただ、国内的には経済制裁の長期化を見込み、引き締めを図っているように見える。年末に異例の4日間開催となった党の総会には地方の幹部らが多数動員された。

 内部結束のため、対外的な挑発行為を加速させかねない懸念もある。昨年は新型短距離弾道ミサイルや新型潜水艦発射弾道ミサイルなどの発射実験が繰り返された。

 東アジアの安全保障への脅威であることに変わりはない。

 先月の日中韓首脳会談は、北朝鮮に完全非核化への取り組みを求めていくことで一致した。

 北朝鮮の危険な行為には毅然(きぜん)と対応しつつ、非核化に向けた流れを逆戻りさせないよう、今後も米朝協議を後押しする必要がある。