西国街道沿いに立つ富永屋。週内にも解体工事が始まることになった(京都府向日市寺戸町)

西国街道沿いに立つ富永屋。週内にも解体工事が始まることになった(京都府向日市寺戸町)

 西国街道沿いに江戸時代から残る旧旅籠(はたご)「富永屋」(京都府向日市寺戸町)の解体工事が、週内にも始まることが、関係者への取材で分かった。保存を願う市民の声を受けて、所有者は存続策を検討してきたが、市に購入の意思がないことから決断。乙訓地域の文化遺産が姿を消す。

 富永屋は、1616年に現在の場所にあった。測量家・伊能忠敬や江戸幕府最後の将軍、徳川慶喜も訪れていた。町家の遺構を残す現在の建物は1735年の棟札が残る。富永屋を所有する須田茂徳さん(73)は老朽化に伴う多額の維持費などから、昨春に取り壊す方針を決定。公的支援を市に働きかける署名活動など、市民から存続を求める声が上がっており、検討を続けていた。
 関係者が仲介役となり、須田さんは昨年12月に市の担当者と話し合いを行った。将来的な買い取りの可能性について確認したが、市は「公有化する財源はなく、購入はできない」とした従来の方針を維持。存続への長期的な方策が見いだせないため解体工事を始めることを決めた。
 富永屋は、2008年にも解体方針が決まったが保存を求める声を受けて計画が中止になっていた。須田さんは「この10年間で状況は変わらなかった。民間企業からの買い取りの申し出もなく、修繕費を募っても今後存続できる保証はないと思った」と話した。