西京極陸上競技場を訪れた金メダリストは大人気だった。取材している部屋の扉が開くだけで歓声、歩くと群衆に囲まれた。2004年のアテネ五輪マラソンで優勝した野口みずきさんが05、07年の全国女子駅伝にゲストとして招かれた際の一こまだ▼走ればもちろん大声援を受け、08年には三重チームの9区で区間賞に輝いた。多くの五輪ランナーを輩出した都大路だがメダリストとして駆けたのは野口さんだけ。本紙には「疾風野口 五輪の輝き」の見出しが躍った▼東京五輪イヤーの今大会。すでに出場を決めた前田穂南選手をはじめ、代表入りに有利な参加標準記録を突破した選手も3人いる。夏の大舞台を見据えた本気の走りが注目される▼鋭い腕の振り、伸びるストライド。沿道で観戦すれば過ぎ去るスピードの速さに驚くのでは。耳を澄ませば息づかいさえ聞こえる▼目を凝らしてほしいのはトップ選手の表情。中継点で待つチームメートの中高校生を不安にはさせられない。「お姉さん」は勝負の表情を一瞬だけ和らげ、たすきを手渡す。「頑張って!」。それは個人種目では見せない優しい笑顔だ▼五輪を目指す多くの有力選手も、きょうの都大路に挑む。来年、野口さんのようにメダルを手に帰ってきてくれたら。そんな夢を乗せ号砲は鳴る。