ずさんな公文書管理の是正につながるだろうか。

 政府が公文書管理の専門職「アーキビスト」の養成に乗り出す。公的な資格制度に基づく認証の付与を2021年から始め、26年3月までに約千人を目指すという。

 1987年に成立した公文書館法で「重要な公文書の調査研究を行う専門職員を置く」と規定しながら公的資格は未整備で、民間資格に基づく少数のアーキビストがいるにすぎない。

 欧米の先進国に比べ管理態勢は大きく立ち遅れており、その意味では一歩前進だ。

 とはいえ政府自身が後世の国民のためにきちんと記録を残そうとしなければ、適正な文書管理はできない。政府の本気度と実効性が問われる。

 行政が作る文書は、政策や意思決定の過程を検証できる大切な記録だ。2011年に施行された公文書管理法は「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源」と位置付ける。

 だが安倍晋三政権下では、南スーダンやイラクに派遣した自衛隊の日報の隠ぺいや、森友学園への国有地売却を巡る財務省の決裁文書改ざんなど、公文書をないがしろにする深刻な問題が相次いで発覚した。

 安倍首相の地元後援会から多数が出席していた首相主催の「桜を見る会」でも、野党議員が招待者名簿を資料請求した日に内閣府がシュレッダーにかけて細断し、追及を避けるための「意図的な廃棄」との疑惑がくすぶっている。

 そもそも、多額の予算に絡む招待者名簿の保存期間を1年未満とし、会の開催からわずか1カ月足らずで廃棄する内閣府に、公文書管理法の所管官庁の資格があるだろうか。

 13~17年度の名簿については公文書管理法などで義務付けられた管理簿や廃棄簿への記載や、首相の同意を得る手続きをせず、内閣府自ら違法行為をしていたことも判明した。

 政府は公文書管理を強めるとして、内閣府に各省庁の文書管理態勢を監視する公文書監察室を設けるなどしているが、歯止めになっていない。監視役を期待できるとすれば、むしろアーキビストの方だろう。

 制度導入への旗振りをしてきた国立公文書館は、アーキビストの職務基準書に「常に公平、中立を守り、証拠を操作して事実を隠蔽(いんぺい)、歪曲(わいきょく)するような圧力に屈しない」と明記した。

 運用は来年4月に国立公文書館内に設置する「アーキビスト認証委員会」が担当。認証アーキビストのほか、実務経験のない人を対象にした准アーキビストも養成し、国立公文書館のほか、各府省庁や地方自治体にも配置するという。

 職務としては公文書の保存、整理、利用者支援のほか、廃棄時における選別評価も行うとしている。きちんと機能させ、恣意(しい)的な文書廃棄の歯止め役にしなければならない。

 そのためにも、政府から独立した第三者の立場で各省庁を指導し、権限を持って監視できる仕組みを作る必要がある。アーキビスト養成を、政府のずさんな文書管理への批判をかわす方便に終わらせてはならない。