懸命にラストスパートする長崎の1区・広中(第1中継所付近)=撮影・山本陽平

懸命にラストスパートする長崎の1区・広中(第1中継所付近)=撮影・山本陽平

神奈川のアンカーを務めた堀(たけびしスタジアム京都)=撮影・人見尚汰

神奈川のアンカーを務めた堀(たけびしスタジアム京都)=撮影・人見尚汰

群馬の7位入賞に貢献した筒井(たけびしスタジアム京都)=撮影・佐伯友章

群馬の7位入賞に貢献した筒井(たけびしスタジアム京都)=撮影・佐伯友章

ラストスパートする山口の高島(たけびしスタジアム京都)

ラストスパートする山口の高島(たけびしスタジアム京都)

 腕時計は置いてきた。19歳の広中璃梨佳(長崎、日本郵政グループ)は「タイムは気にせず走りました」。18分39秒。17年間も破られなかった1区の区間記録を塗り替えた。5年連続の区間賞獲得も大会史上初の快挙。異次元の記録を歴史に刻んだ。

 走り終えた後も表情は変わらない。トレードマークの帽子を脱ぎ、走り終えた西大路通に向かって一礼。倒れ込んだ実業団選手に駆け寄って手を差し出す場面もあった。自然体を貫く本人をよそに、区間新の衝撃は一気に拡散。タイムを聞いた周囲のランナーは「やばっ」と絶句した。
 号砲から間もなく、競技場内で先頭に立った。「自分のペースで最初から行こうと決めていた。楽しんで最後まで走りきることが目標でした」。区間記録は全く狙っていなかった。1歳年上で世界選手権代表の田中希実(兵庫)の存在でさえ「意識していなかったというと嘘になりますが、特に考えていませんでした」。序盤にぴたりと背中に付かれた安藤友香(京都)を引き離した場面も「分からなかったです」と屈託なく笑った。
 社会人1年目。所属先では全日本実業団駅伝でいきなり1区区間賞を獲得した。昨年12月には5000メートルで日本歴代5位のタイムをマークして東京五輪の参加標準記録を突破した。順風満帆に見える19歳の心は、それでも揺れるときがある。
 「今回の試合に至るまでに不安の方が大きくて。最後まで走り切れるだろうかという面もあった」。練習はこなせても、軽いジョギングでリズムをつかめず戸惑うことがあるという。「自分の体調に合わせて練習メニューを組んでくださるチームには感謝している」と正直に語る。
 ぶれずに前を向く視線の先には、東京五輪のトラックがはっきりと見えている。「東京五輪を走るんだという意気込みで、日本選手権は通過点にしたい」。目標は高く-がモットー。何が起きてももう驚かない。