9区区間賞の快走を演じた東京の新谷(たけびしスタジアム京都)

9区区間賞の快走を演じた東京の新谷(たけびしスタジアム京都)

神奈川のアンカーを務めた堀(たけびしスタジアム京都)

神奈川のアンカーを務めた堀(たけびしスタジアム京都)

群馬の7位入賞に貢献した筒井(たけびしスタジアム京都)

群馬の7位入賞に貢献した筒井(たけびしスタジアム京都)

ラストスパートする山口の高島(たけびしスタジアム京都)

ラストスパートする山口の高島(たけびしスタジアム京都)

 笑顔でたすきを受け取る。前を行く他チームへ視線を向けた瞬間、東京のアンカー、新谷仁美(東京陸協)の表情が一変した。「怪物のごとく追う」との戦前の言葉通り、獲物と狙い定めた相手を1人ずつ抜き去り、31歳の磨き抜かれた体が躍った。

 中継点では先頭の京都から1分34秒差があったが、6人抜きで21秒差まで詰め寄る3位。福士加代子(ワコール)の区間記録まであと5秒に迫った。しかし、「逆転できるはずだった。こんなタイムでは世界と戦えない。怪物じゃなくて人間でした」と厳しい。目指す舞台で戦うであろう、世界の猛者の幻影とも競っていた。
 一度は現役を退いたが、2018年に5年ぶりに復帰。すぐにトップ選手に返り咲いた。規格外の走りと同様、発言も予定調和を嫌う。「仕事だから走っている」「五輪に特別な意識はない」。強烈なプロ意識が言葉にこもる。「五輪も駅伝も練習会も、常に全力疾走する」というストイックな姿勢が強さの源泉となっている。
 通算6度目の区間賞は福士に並ぶ最多タイ記録。「ずっと福士さんの背中を追いかけてきた。世界への道を切り開いてくれた人」。憧れの選手も今や超えるべき存在となった。
 世界の壁が厚い1万メートルで、ロンドンに続く2度目の五輪を目指す。「五輪は参加するだけで価値があると言う人もいるが、自分は命を懸けて戦わないといけない。それが仕事なので」。仕事と表現するクールさと、激しい闘争心は、新谷の中で矛盾しない。真っすぐに、世界での勝利だけを狙う。