沿道の声援を受けて都大路を駆ける大阪の前田(右)。左は群馬の筒井(京都市右京区五条通天神川西入ル)

沿道の声援を受けて都大路を駆ける大阪の前田(右)。左は群馬の筒井(京都市右京区五条通天神川西入ル)

 「オリンピック頑張れー」。沿道の大きな声援を浴び、東京五輪マラソン代表の前田穂南選手=天満屋=がアンカー9区で快走して大阪を8位入賞に導いた。「タイムは(昨年より)悪いんですけど、チーム一丸になっていい形で最後まで走れた」。レース後は穏やかな笑みを浮かべ、温かい拍手に応えた。

 都大路には忘れられない思い出がある。大阪薫英女学院高時代、チームは全国高校駅伝と全国女子駅伝で「ダブル優勝」を果たしたのに、自身は一度も走る機会がなかった。しかし、同高監督で今大会の大阪も率いた安田功監督(58)は「前田は当時から決して弱い選手ではなかった」と強調する。「長い距離では抜群の安定感を持っていた。ただ高校生の区間では距離が短すぎた」と説明した。
 高校卒業後に志願して実業団の天満屋へ。多くの五輪ランナーを育てた名門の厳しい練習に食らい付き、昨年9月の東京五輪マラソン代表選考レース「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)」で圧勝して代表に決まった。
 口調は常に穏やかでも、秘めた闘志は人一倍強い。高校駅伝で優勝した夜、前田は自宅に帰った後、「私は出てないから疲れてない」と一人で走りに出かけたという。安田監督は「前田は試合に勝つためというより、自分の走りを高めるために全てを注いでいる」と感じてきた。
 この日のレースで、前田選手にたすきを渡した8区の西沢茉鈴選手(15)=誠風中=は「前田さんは良い意味で近寄りがたいオーラがあった。私も速いだけでなく強い選手になりたい」とうれしそうに話した。
 アンカーで3人を抜いてチームを8位に引き上げた教え子を、安田監督は「入賞に持っていくのはさすが。仕事をしてくれた」とたたえた。前田選手は「前にいる選手を見ながら気負わず楽しんで走れた」と2年連続の都大路を振り返った。