香港デモであらわになった中国政府の圧力に対する反発が背景にあったことは疑いないだろう。

 台湾の総統選で、独立志向の現職蔡英文氏(民進党)が再選された。親中路線をとる国民党候補に総統選史上最多得票で圧勝した。

 民主主義や基本的人権、言論の自由などの普遍的価値観を認めない中国が求める「一国二制度による統一」に、有権者が強い拒否感を持っていることの表れだ。

 力ずくで支配を強めようとすればするほど、台湾の人々の反発は強まる。中国の習近平指導部は、そこを深く認識する必要がある。

 蔡氏は内政を巡って支持率が低下し、2年前の統一地方選では惨敗した。しかし、国民党が政権をとれば台湾が中国にのみ込まれるとの人々の不安感が増幅し、総統選では蔡氏に有利に働いた。

 複雑なのは、貿易摩擦や安全保障などを巡る米国と中国の対立が総統選の背後にあることだ。

 トランプ米政権は台湾への支援を強めている。訪米した蔡氏を厚遇し、中国が台湾海峡に空母を通過させて軍事的圧力をかけると軍艦を派遣した。約27年ぶりに台湾へ戦闘機を売却する方針も固めている。歴代米政権は米中関係のトラブルの種にならないよう台湾に求めてきたが、トランプ政権は中台の摩擦を容認している。

 総統選の民進、国民両党の対決が米中の「代理戦争」の様相を帯びたことで、中国がさらに締め付けを強めることが懸念される。

 勝利宣言した蔡氏は中国に対して、武力による威嚇を行わないことを求め、平和的で対等な立場での対話を呼びかけた。だが、そう簡単にはいかないだろう。

 台湾では中国による一部メディアやインターネットなどへの「浸透工作」が問題化している。台湾立法院は年末、民進党提出の「反浸透法案」を可決した。選挙活動などへの干渉を阻止する狙いだが、中国を刺激する可能性もある。

 中国は、台湾を国際社会で孤立させる戦略を強化している。昨年も台湾と断交する国が相次ぎ、台湾と外交関係のある国は減少の一途にある。資金力を背景に影響力を行使したとみられている。

 台湾は軍事や経済で中国と渡り合える状況にない。国際社会と良好な関係を築き、自立を確保できるか。蔡氏の手腕が問われる。

 日本も台湾との関わりが深い。安倍晋三政権は春の習氏訪日を控えているが、基本的人権などを認めない大国の振る舞いを黙認してばかりはいられないだろう。