祈念館建設に向けて動き出したウトロ地区。歴史を伝える生活道具の収集も始まっている(京都府宇治市伊勢田町)

祈念館建設に向けて動き出したウトロ地区。歴史を伝える生活道具の収集も始まっている(京都府宇治市伊勢田町)

 第2次世界大戦中に京都飛行場建設に携わった朝鮮人の子孫らが暮らす宇治市伊勢田町のウトロ地区で、住民や支援者らが、地域の歴史や住民の歩みを次世代に伝える「ウトロ平和祈念館」建設に向けて動きだしている。歴史を伝える上で、住民が気軽に集えるコミュニティーの場であるとともに「若い世代を含む幅広い人と交流できる機能が必要」として、展示内容や料理づくりなどの体験メニューを議論している。

 祈念館建設に向けた第1回ワークショップが昨年12月、ウトロ地区近くの府立城南勤労者福祉会館で開かれた。住民や支援者らでつくり、建設や運営を担う「ウトロ民間基金財団」の厳本明夫理事長(66)は「長年闘ってきた居住場所を巡る問題は市営住宅建設で確保されつつある。運動の最終形として、ウトロの歴史を残す祈念館をどうすべきか考えてほしい」と参加者約50人に呼び掛けた。
 ウトロ地区では土地の明け渡しを巡り、所有企業と住民が長年司法の場で争い、2000年に住民側の敗訴が確定。その後、支援者や韓国政府の出資による2財団が土地を購入した地区東側で、日本政府と京都府、宇治市の構想に基づく市営住宅建設が進み、18年には1期棟に40世帯が入居した。
 祈念館は、完成まで2年~3年かかるとされる2期棟の隣接地に建てる。建設費約2億円は主に韓国政府が用意し、残りはウトロ民間基金財団が出す。同財団は、定期的に開催するワークショップの意見などを踏まえ、基本計画を今夏までに策定する。
 第1回ワークショップでは、厳しかった生活環境や長年の裁判を分かりやすく伝える資料が必要という意見のほか、「祈念館に関心を持ってもらう仕掛けが重要」という声が多く出た。
 仕掛けについては、キムチづくりをオモニ(お母さん)から学ぶなど文化体験を催したり、焼き肉もできる多目的広場を設けたり、日韓の中高生ら多くの人がウトロ地区を見学に訪れていることから「宿泊スペースを設けては」といった意見が出された。
 同財団理事で、NPO法人「コリアNGOセンター」(大阪市)の郭辰雄(カクチヌン)・代表理事(53)は「ヘイトスピーチなどいまだに差別がある中、在日コリアンが堂々と生きていくには先人の生き方に触れる学びの場が大事。日本と在日コリアン、韓国や朝鮮の人らが相互理解を深める場にもしたい」と話す。