NHKがテレビ番組を放送と同時にインターネットに流す「常時同時配信」が、今春から始まることになった。

 総務省の求めに応じ、事業計画を縮小した実施基準案が認可されたためで、放送と通信の融合が本格化する。

 対象となる番組は総合テレビとEテレだ。放送の受信契約を結んでいる世帯の人は、追加料金なしでスマートフォンやパソコンを使って見ることができるため、利便性が高まる。

 ただ、資金力のあるNHKが常時同時配信で自由に拡大していけば民業圧迫につながるとの懸念は民放側に根強くある。

 視聴者の受信料で支えられているNHKは、国民の「知る権利」に応える重い責任があり、それには民放と共存し、補い合う関係が欠かせない。

 総務省が示した認可条件には、民放との連携を具体化する場の設置なども挙げられている。節度をもった運営を求めたい。

 常時同時配信の解禁は、公共放送から通信と融合した「公共メディア」への脱皮を目指すNHKが要望し、昨年5月に成立した改正放送法で可能となった。

 だがNHKが申請した実施基準案は実質的な配信費用が膨らみ、上限とした「受信料収入の2・5%」が骨抜きになったことなどから、高市早苗総務相がそれまで認可が適当としてきた判断を留保する異例の対応をとった。

 NHKは費用を圧縮し、そのために配信時間も当面は「常時」ではなく、早朝や深夜の配信を取りやめるなどして認可にこぎつけた形だ。

 今後は収入が7千億円を超える受信料の引き下げや関連会社の統合など経営改革の宿題にも取り組まねばならない。

 だが、同時配信に踏み出すNHKに何より求められるのは、視聴者の信頼である。

 昨年は保険の不正販売を報じた番組を巡って、会長が日本郵政グループの抗議を受けた経営委員会から厳重注意され、郵政側に事実上謝罪。自主自立が揺らぐ事態を招いた。

 テレビとネットが融合していく時代の公共放送の役割、責任とは何かという原点に返った議論を深める必要がある。

 今年から高速大容量の第5世代(5G)移動通信システムの導入も始まり、動画の送受信環境は大きく変わっていく。

 NHKの立ち位置を見つめ直す機会にしてほしい。