中国・武漢市で集団発生した新型のコロナウイルスによる肺炎を発症した患者が、日本国内で初めて確認された。

 厚生労働省によると、武漢市滞在から戻った神奈川県在住の30代の中国人男性で、すでにほぼ回復している。家族や接触した医師を含め二次感染はみられないという。

 新型肺炎と聞けば、2003年にアジア中心に猛威を振るった重症急性呼吸器症候群(SARS)を思い起こす人も多いだろう。

 新型ウイルスの性質は詳しく分かっていないが、今回の発生地域や重症者は限られ、感染力は強くないとの見方が大勢だ。

 厚労省は「感染拡大の可能性は低い」としており、過剰に心配することはないようだ。水際対策と患者の早期発見、対応を着実に行うことが重要だろう。

 新型のウイルス性肺炎は、武漢市で先月から41人が発症し、うち2人が死亡した。患者の多くは市中心部の海鮮市場で働く人と客で、生きたまま取引される動物が感染源ではと疑われている。

 渡航した男性は市場に立ち寄っていないが、肺炎の症状が出ている人と接触していたという。現地でも患者家族の発症例があり、濃厚な接触で限定的に人から人への感染が起きた可能性がある。

 気がかりは日本の防疫態勢だ。

 国内の空港は常時、入国者の体温をサーモグラフィーで確認している。男性は武漢で発熱したが、解熱剤を服用したことで異常を見つけられなかったとみられる。

 男性は帰国当日に医療機関を受診したが、重症化の可能性が判明して保健所への報告と対応がとられるまで8日間もかかった。

 厚労省が渡航者の自己申告や医療機関による早期連絡の呼びかけを強めたのは当然だ。症状が軽いため見逃されている恐れもあり、渡航者の周辺で兆候はないか注意深くフォローすべきだろう。

 武漢市には多くの日本企業が進出し、成田、関西空港とも直行便がある。今月下旬には「春節」(旧正月)の連休で中国から大勢の訪日客が見込まれている。

 今夏には東京五輪・パラリンピックで世界中の人々を迎え、さまざまな感染病が持ち込まれるリスクも高まる。備えは十分なのか見直し、正確な情報に基づく対処法を国民全体で共有していく必要がある。

 普段から、こまめな手洗いやマスクの着用、せきのエチケットに気をつけるなど、周りに感染を広げない基本的対策を心掛けたい。