この時節、ふと胸に浮かぶ一首がある。俵万智さんのあの歌だ。<「寒いね」と話しかければ「寒いね」と答える人のいるあたたかさ>。何気ない、同じ言葉のやりとりがぬくもりを生む▼きょうは二十四節気の大寒。今冬は「京の底冷え」に遠いが、それでも一年のうちで最も寒い時期とされる▼寒造りや寒干し、寒ざらしなど、冷気による味の仕込みに先人の知恵をみる。寒稽古、寒念仏、寒弾き…。武道や仏道修行、芸事も寒中を重んじてきた。寒さは自然や人の心身を引き締め、自省の念をもたらすのかもしれない▼先週、25年を迎えた阪神大震災も寒暁だった。この四半世紀のあり方を省みる人も多いだろう。神戸市の人と防災未来センターが作った教訓集は、減災に向けて「守る」「助け合う」「創(つく)る」など5項目を挙げ、自助・共助・公助を説く▼振り返れば震災の時、全救出者数の約8割が近隣住民らの手で助けられた。後の厳しい生活でも人のつながり、地域の結びつきがいかに大切かを学んだ。<闇の中今日大寒と誰か言う>宇多喜代子▼先日の本紙「窓」欄の投稿で、バスや電車の乗客はスマホに夢中で車内で話し声がしない、と男性が憂えていた。友人といても無言でスマホを見る光景は何となく寒々しい。さりげない会話を増やしたい。