かんぽ生命保険の不正販売問題で、顧客に不利益となった恐れのある契約が過去5年間で約18万3千件あった。

 親会社の日本郵政は、3千万件の全契約を調査し、9月末に中間報告する方針だ。

 金融庁はその後、かんぽ生命への立ち入り調査を実施する。不正の規模を考えれば、業務改善命令などの厳正な対処が必要となろう。親会社も含めた経営者の責任も問われるべきだ。

 問題の契約には、保険料の二重徴収や、予定利率の低い同じ種類の保険への「乗り換え」、一時的に無保険状態になった事例などが多数あった。

 なぜこんな大規模になったのか。最大の原因は、かんぽ生命が保険の販売を委託している日本郵便のノルマ至上主義にある。

 全国一律のサービスを義務付けられている日本郵便にとって、郵便事業は利益幅が小さく、かんぽ生命とゆうちょ銀行からの手数料が収益の柱となっている。

 一方、かんぽ生命のメイン商品である貯蓄型生命保険は低金利政策の長期化で商品の魅力に乏しく、新規顧客の開拓は難しい。

 このため日本郵便は郵便局員を競わせて、既存の顧客に保険を乗り換えさせていた。新規顧客が増えることになり、かんぽ生命からの新規手数料も入るためだ。

 乗り換えを新規契約に見せかけるため一定期間、無保険にさせたり、被保険者を変える手法がまかり通っていた。いずれも、保険業法では禁じられている。

 日本郵政の長門正貢社長は記者会見で過剰なノルマが不正の背景にあったことを認め、2019年度のかんぽ生命の営業目標を廃止すると表明した。

 当然の措置だが、不正の原因を郵便局の販売現場だけに押し付けているようにも見える。

 日本郵便が何らかの商品販売手数料を得ないと利益を確保しにくい状況は変わらない。持ち株会社の経営者として構造的な問題にどう対処する必要があるか、考えを示すべきではなかったか。

 長門社長はまた、日本郵政が今年4月にかんぽ生命株の一部を売却した時点でかんぽ生命の経営陣が個別の不正事案を把握していたことを認めたが、「審査を受けており、問題ない」との認識を示した。

 この問題でも、経営者の内向きな姿勢が際立つ。このままで顧客や一般の投資家の理解を得られるとは思えない。