核兵器の製造や保有を全面的に禁じる核兵器禁止条約が国連で採択されて2年が過ぎた。50カ国・地域以上が批准し発効すれば、「核兵器なき世界」へ大きな弾みとなるに違いない。

 核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)によると、7月末までに70カ国が条約に署名したが、批准国は24カ国にとどまる。賛同国と核保有国の溝は深く、発効を見通せないのがもどかしい。

 史上初めて核兵器の全面禁止を定める条約は、一昨年7月、国連加盟国の6割を超える122カ国・地域が賛成し、採択された。前文に「ヒバクシャの受け入れ難い苦しみに留意する」と記し、核の非人道性を強調する。被爆者らの長年の訴えがようやく結実したとも言える。

 条約採択に尽力したICANにノーベル平和賞が贈られたように、核廃絶は世界の人々の願いである。ところが核拡散防止条約(NPT)を重視する米国やロシア、中国など核保有五大国は反対し続けている。

 ストックホルム国際平和研究所によると、世界の核弾頭数は減ったとはいえ1月時点で1万4千発近い。その9割を米ロが保有する構図は変わらない。

 核禁条約採択の背景にNPT体制下、五大国が特権を持ちつつ義務を果たさないため核軍縮が進まない、とのいら立ちがあったことを忘れてはならない。

 核保有国抜きでは実効性を欠く、核保有国と非保有国の分断がさらに深まる―との指摘もある。だが抑止力に頼る限り、核兵器はなくならない。

 来年のNPT再検討会議に向け、5月に催された最後の準備委員会も、合意文書のたたき台となる勧告案採択を見送らざるを得なかった。今やNPT体制さえ危機的状況と言える。

 加えて昨今、世界は急速に核廃絶とは逆方向に進んでいるようにもみえる。

 米国のトランプ政権は昨年、「核体制の見直し(NPR)」で核兵器の役割拡大を目指す方針を打ち出した。まるでオバマ前政権が掲げた「核兵器なき世界」を踏みにじるように「使える核兵器」に前のめりだ。

 米ロの中距離核戦力(INF)廃棄条約もおととい失効し、ミサイル開発競争が本格化する恐れがある。北朝鮮の非核化も遅々として進まない。

 米国の「核の傘」の下にある日本は、「わが国のアプローチと異なる」として、米国に追随して条約に背を向けてきた。政府は核保有国と非保有国の「橋渡し役」を目指すとするが、その姿勢から積極的に核廃絶を目指す熱意を感じ取れない。

 唯一の戦争被爆国である日本が、なぜ核禁条約を支持しないのか。非核保有国や被爆者から強い失望や批判を浴びているのは残念極まりない。米国の顔色をうかがうばかりでは国際社会の信頼を失うことになる。

 間もなく広島と長崎は74回目の「原爆の日」を迎える。

 核兵器の使用がどんな惨禍を招くか。骨身にしみて理解している日本には、核廃絶の取り組みの先頭に立つ責任がある。政府は被爆者らの切なる声に真摯(しんし)に向き合わねばならない。今こそ正念場である。