広島はきょう、長崎は9日に74回目の「原爆の日」を迎える。

 核兵器の被害の恐ろしさを直視し、惨禍を繰り返さない誓いを確認する日である。

 両市の平和式典で被爆者の姿が年々減る中、74年たっても核の恐怖に脅かされ続けている世界の現実に痛恨の思いを禁じえない。

 核兵器のない世界へ歩みを進めることは私たちの責務である。

 今年の広島、長崎の式典で市長が読み上げる「平和宣言」には、国連で2017年に採択された核兵器禁止条約への日本政府の署名・批准を求める文言がともに盛り込まれる。

 過去2年、松井一実広島市長は「宣言を政争の具にしたくない」と言及に消極的だったが、被爆者団体など30近くが政府への要請を求めたのを「受け止めないわけにはいかない」と決断したという。

 訴えてきた核廃絶が遠のきつつある危機感の表れといえよう。

 オバマ前米大統領の「核兵器なき世界」提唱を契機に、核廃絶への世界的うねりは禁止条約に結実した。だが、これまでの批准は条約発効に必要な50カ国・地域の半分程度で足踏みしている。

 かたや、核兵器の役割拡大を主張するトランプ米政権は、今年2月に臨界前核実験を強行し、限定的な核使用まで新指針に掲げた。

 米国とロシアの中距離核戦力(INF)廃棄条約も今月2日に失効した。核保有国が固執してきた核抑止論は、歯止めなき核軍拡をもたらす懸念を高め、米国の「使える核兵器」戦略によって日本などを覆う「核の傘」の危険度が増す恐れが否めない状況だ。

 にもかかわらず、日本政府は核の傘に依存し続け、核兵器禁止条約に背を向けている。核保有国と非保有国の橋渡しを掲げるが、米国の核戦略に追従するばかりで核廃絶への道筋も行動も示せていない。それは唯一の戦争被爆国としての責任と、被爆者の苦しみに向き合わないことではないか。

 核兵器の製造、保有、使用を禁じる条約発効へ日本が加わってこそ、米国とその同盟国、隣国のロシアや中国、北朝鮮に核依存の見直しを迫る役割を果たせよう。

 全国で被爆者健康手帳を持つ人は18年度末で約14万5千人と、40年近くで約6割減っている。平均年齢は82歳を超え、体験を直接聞くのが難しくなりつつある。核兵器被害の実相を語る証言や遺物をいかに継承し、広く若い世代に伝えていくかも被爆国の重い責任である。