新しい大津市長に、市政の転換を訴えた佐藤健司氏が選ばれた。大津市議、滋賀県議としての政治経験を生かしたかじ取りに、有権者は期待したといえる。

 2期8年務めて引退する越直美市長は、子育て支援や学校のいじめ対策強化などに実績を残した。一方で行政サービスの民営化や合理化を矢継ぎ早に進め、「市民の理解が不十分」「現場職員の意見を吸い上げ、組織の力を生かす姿勢に欠ける」といった批判も浴びた。

 今回、2人の新人候補が越市政の「継承か見直しか」を軸に争ったが、一つ一つの市政課題に対する考えやスタンスの違いははっきりしなかった。

 街頭では2人とも市民との対話重視を強調。焦点の市民センター再編方針についても、双方が見直しを掲げた。コストカットの是非を論じる一方で、先々まで見通した財政運営の在り方やスケールの大きなまちの将来像を語る場面は乏しかった。34万人の県都にふさわしい政策論争を期待した市民には物足りなかったのではないか。

 投票率は過去3番目に低い39・77%に沈んだ。新たに有権者になった18、19歳をはじめ市民の関心を高められなかったことを、候補者とともに運動した各政党も重く受け止める必要がある。

 大津市は近年、京阪神へのアクセスの良い東南部を中心に転入者が増えているものの、少子高齢化は今後それを上回って進む。

 佐藤氏は、越氏が道路整備など土木費をしぼったことを批判し、「やるべきことをやる」市政に変えると強調した。老朽インフラの更新などを進めるのは大切だが、優先度の低い工事が紛れ込んだり、費用対効果の検討が甘くなったりしないか気がかりだ。

 必要な改革を後戻りさせるようなことがあっては民意に反する。有権者が望んでいるのは、改革についての丁寧な説明や熟議、合意づくりだろう。

 目先の利害を超えて、未来のために市民が前を向ける、そんなまちづくりのビジョンを描いてもらいたい。

 足元の課題も少なくない。迷走している中消防署の移転問題は、大規模地震に備えて早期決着が必要だ。職員との意思疎通を密にし、行政の推進力につなげることも欠かせない。

 ここ数年で財政指標は良くなったものの、市債残高は1100億円規模の市の年間予算とほぼ同額だ。向こう5年間の財源不足は382億円と見積もられている。引き続き、改善の努力がいる。