通常国会が招集され、安倍晋三首相が施政方針演説を行った。

 旧民主党政権時代にあったと主張する「諦めの壁」をアベノミクスや働き方改革などを進めたことで打ち破ったと自賛し、全世代型の社会保障制度の実現などに意欲を示した。

 一方で、私物化だと批判を浴びている首相主催の「桜を見る会」や、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)に絡んだ汚職事件など、国民が疑念を抱く問題には触れなかった。

 長期政権の実績を並べ、進めたい政策を述べるだけの不十分な内容だったと言わざるを得ない。政治不信を招いた政権の課題を素通りしており、首相が繰り返した「新しい時代を切り開く」との言葉が空疎に聞こえる。

 問われているのは、政権のあり方である。国会では疑惑への真摯(しんし)な説明が求められる。

 桜を見る会を巡っては、首相の地元後援会関係者が大勢参加した経緯についていまだ明確な説明がない。招待者名簿に関し、公文書管理法違反も判明している。

 IR汚職事件では、元内閣府副大臣が逮捕されたほか、贈賄の疑いが持たれている中国企業側が衆院議員5人にも現金を渡したと供述している。

 とりわけ、IRについては事業自体への国民の不安は根強く、野党4党はカジノ営業を禁止する法案を衆院に共同提出した。事件の全容解明と併せ、経済の活性化にカジノが本当に要るのかを再度、国会で議論する必要があろう。

 「政治とカネ」の問題では、昨秋に相次ぎ辞任した元閣僚2人らの公選法違反疑惑もある。登院した渦中の議員は謝罪の言葉を口にしたが、捜査中を理由に詳しい説明は避けた。

 野党は追及を強める構えを見せるが、立憲民主党と国民民主党の合流は国会開会に間に合わなかった。「安倍1強」を許してきた責任が「多弱」の野党にもあったことを自覚すべきだ。東京五輪を控えて会期延長が難しい中、政権の逃げ切りを許してはならない。

 首相の自民党総裁任期は、延長しなければ2021年9月までで、残り2年を切っている。「私の手で成し遂げたい」とする憲法改正について、首相は施政方針で各党に具体案を提示するよう求め、「国会議員の責任」を果たすよう呼び掛けた。

 改憲問題でも「1強」を貫こうとすれば、国民からの反発は免れまい。謙虚に説明し、丁寧に議論を積み上げる必要があろう。