シートベルトやチャイルドシートがなくても道交法違反にならない例

シートベルトやチャイルドシートがなくても道交法違反にならない例

 車に子どもを多数乗せた際、乗車定員内でもシートベルトやチャイルドシートの数が足りなくなることがあるが、定員を守ればこれらの安全具を付けなくても道交法違反にならないという「盲点」がある。しかし、安全具なしで事故に遭うと重大な被害につながる危険性が高い。専門家は「法律が追いついていない。命を守るため、安全具なしで子どもを乗せることは控えるべき」と指摘する。

 道交法は、12歳未満の子ども3人を大人2人と換算する。例えば、大人3人と子ども3人が5人乗りの車に乗った場合、「大人5人が乗車」という扱いになり、乗車定員は守られる。ただ、一般的に5人乗りの車にシートベルトは5本しかないので、1人は着用できない。道交法は、全席シートベルト着用と6歳未満のチャイルドシート装着を義務付けているが、前述のケースは「違反にならない」(警察庁)。

 同庁の説明では、道交法には除外規定があり、固定できるチャイルドシートの数を超えた幼児を乗せる場合、乗車定員内であればチャイルドシートがなくても違反には問われない。シートベルトも設置本数以上の人員を乗せても定員が守られていれば、非装着者の年齢を問わず違反ではないという。このため、子どもが多数乗った場合に「安全具なしの人がいるが、合法」という状態が生まれる。

 しかし、安全具がないことが重大な結果につながるケースがある。滋賀県草津市の名神高速道路で5月24日に多数が死傷した玉突き事故では、死者1人、重軽傷者11人の被害が出たワゴン車がこの状況だった。

 滋賀県警高速隊によると、ワゴン車には3家族12人が乗っていた。うち4人が大人、8人が0~9歳の子どもだった。子ども8人は大人約5・3人分と換算されるため、乗員は約9・3人扱いで、乗車定員(10人)は守られていた。

 車内にはシートベルトが10本あり、チャイルドシートが2台載っていた。チャイルドシートはシートベルトで固定するため、乗員12人のうち、少なくとも2人は安全具を着用できなかったことになる。死亡した女性(58)と一時意識不明になった女児(7)が車外に投げ出されたが、同隊によると、誰が安全具をしていなかったかは不明という。

 警察庁は、道交法の除外規定について、「子どもを多く乗せた際、全ての幼児にチャイルドシートを義務付ければ、大型の車の購入負担をより国民に負わせることになる」とし、シートベルトも含めて改正の予定はないとしている。

 シートベルトと人身事故の関係に詳しい滋賀医科大の一杉正仁教授(社会医学)は「安全具を付けなければ時速十数キロの衝突で体は吹っ飛ぶ。近年、危険性が科学的に明確になり、後部座席のシートベルト義務化などにつながってきたが、法律が追いついていない部分がある」と指摘した上で、「『取り締まられないから大丈夫』ではなく、ドライバーは乗員の命を守るため、無理な乗車をせず必ずシートベルトやチャイルドシートを使うべき」と呼びかける。