米中の対立は貿易摩擦にとどまらず、新たな次元に突入した、とみるべきだ。

 トランプ米政権が、中国を「為替操作国」に認定した。四半世紀ぶりのことである。

 上海の市場で11年ぶりの人民元安ドル高になったことを受けて、中国が自国通貨を安値に誘導した、という。

 これに対し、中国人民銀行(中央銀行)は「為替操作の問題は存在しない。遺憾だ」と反発しているが、米国は国際通貨基金(IMF)を交えて是正を求め、新たな制裁も視野に入れる構えだ。

 貿易不均衡に端を発した報復の応酬が、国家の根幹である為替政策にまで及ぶことになる。

 元について中国は、中央銀行が朝に発表する基準値の上下2%しか1日の変動を認めない「管理変動相場制」を採用している。当局の裁量で決まる「管理通貨」に戻りつつある、との見方もある。

 元安に誘導すれば、自国製品の海外価格が下がり、米国が制裁関税を上乗せしても、競争力を維持できる。

 トランプ大統領は「中国が為替操作をしている」と度々、批判してきた。中国との貿易協議が進まないのは、元安で制裁があまり効いていないからだ、と考えているようだ。

 そこで今回、為替操作国に認定するカードを切った。

 今後も元安ドル高が進むと「トランプ氏が為替介入を指示してもおかしくない」との声が、市場で出始めている。世界の基軸通貨であるドルへの介入があれば、経済不安が全世界に広がっていくのは間違いない。

 こうした状況や思惑もあって、今回の認定は、世界同時株安を呼んだ。

 最悪の事態を避けるには、米中の貿易協議を進展させるしかあるまい。両大国は、大局を見渡して合意点を見いだしてほしい。

 比較的安全な通貨として、円を買う動きが起きている。

 円高傾向となって日本からの輸出には、高いハードルが設けられた。トヨタ自動車など輸出企業は為替レートを見直し、業績予想を下方修正した。

 また、日本との貿易協議で米国が、日本を中国と同様の為替操作国に認定する可能性も、指摘されている。

 10月には消費税が増税される。日本も、経済的な難局を迎えるのではないか。警戒を怠らず、対策を用意しなくてはならない。