公益通報制度について「不正を正すために声を上げる人が守られる制度になってほしい」と語る原告の男性(8日午後2時40分、京都市中京区)

公益通報制度について「不正を正すために声を上げる人が守られる制度になってほしい」と語る原告の男性(8日午後2時40分、京都市中京区)

 児童養護施設内で起きた性的虐待事件を内部告発するために京都市児童相談所(児相)の相談記録を持ち出すなどしたことが不正な行為だとして、市から停職処分を受けた男性職員(48)が、市に対して懲戒処分の取り消しを求めた訴訟の判決が8日、京都地裁であった。藤田昌宏裁判長は「不当な動機や目的が認められず、市の処分は裁量権を逸脱して違法」として、市に懲戒処分を取り消すよう命じる判決を言い渡した。

 判決によると、男性は児相に勤務していた2014年10月、左京区にある民間の児童養護施設に入所する少女の母親が児相に対し、同施設の施設長による性的虐待の相談を寄せていたことを把握。しかし児相が問題を調査せずに放置していたため、上司に調査するよう指摘した。児相の調査などを受け、施設長は15年9月、少女に対する児童福祉法違反容疑で逮捕された。

 男性は母親の相談を放置していた事実を訴えるため、市の公益通報外部窓口に通報。その前に事実を確認するために少女に関する記録を閲覧したり、印刷して自宅に持ち帰ったりした。

 一方、男性が通報した事実が男性の意に反して市に伝わり、市は記録の閲覧や持ち出し行為が職員の守秘義務に違反するなどして同年12月、停職3日の懲戒処分にした。

 藤田裁判長は判決理由で、記録の閲覧について、当時は担当外の児童情報の閲覧を禁止する規定や指導がなかったとし、虐待事案の共有などのために「かえって閲覧することも許容されていた」と指摘。記録の持ち出し行為は必要性が認められないとしながらも「内部通報に付随する形で行われたため、動機や目的の悪質性は高いものではない」と認定。市の懲戒処分は「著しく妥当性を欠いており、違法」とした。

 京都市の藤田洋史人事部長は「判決内容を詳細に分析し、控訴する方向で早急に対応したい」とのコメントを出した。