京都市長選(2月2日投開票)の告示まであと1日と迫った。立候補を予定している現職の門川大作氏(69)、弁護士の福山和人氏(58)、市議の村山祥栄氏(41)の3人の公約の中から、主要な争点となる財政、交通、景観、観光の4分野について分析し、主張の特徴や違いを探った。

 

財政

 京都市は学生や高齢者が多いため他都市に比べて市税収入が少なく、財政基盤の強化とコスト削減が政策実現の鍵を握る。

 財政再建を「一丁目一番地」に掲げるのが村山氏だ。門川市政に対して「破綻寸前の財政を放置してきた」と批判し、市長給与の50%カットや地下鉄・市バスの民営化を打ち出す。収入増の核となる新税導入は「現時点で示すと誤解を招く」と踏み込んでいない。

 これに対し、門川氏は財政の厳しさについては認めつつも、「全会計の決算でみれば12年前の就任時と比べて大幅に改善している」とけん制する。業務の民間委託などを進めて人件費を削減するほか、セカンドハウス(別荘)を対象とした新税を導入するとした。

 福山氏は財政破綻した北海道夕張市に次いで状況が悪いとする村山氏の主張を「一つの指標に基づく見方。オオカミ少年的だ」と批判。大型公共事業の見直しや基金の精査などの財源確保策を挙げつつも、「今やるべきことは市民の暮らしへの投資」と言い切る。

交通

 市中心部は市営地下鉄と市バスの交通網が充実している一方、周辺部は車がなければ生活できない地域も多い。地下鉄東西線は当初、洛西への延伸計画があったが、財政難で実現していない。3人とも新交通システムを活用し、中心部と周辺部の接続強化を目指す。リニア中央新幹線誘致や北陸新幹線新大阪延伸の是非では見解が分かれる。

 福山氏は「洛西地域が地盤沈下しかねない」として、南区のJR桂川駅と西京区の洛西ニュータウンを結ぶLRT(次世代型路面電車)の導入を検討する。市バスと地下鉄の運賃を値下げし、周辺部はバス路線を「拡充」するとしている。市が見直す方針の敬老乗車証は現行制度を守り、リニアと北陸新幹線は「優先順位が低い」とする。

 村山氏もJR桂川駅と洛西ニュータウンの接続を重視し、専用軌道を設けて高速バスを走らせる「BRT」を導入するとした。さらに観光客を受け入れるための新たなインフラとして、市中心部の地下に自動運転の小型車両を走らせる「次世代型環状線」構想を描く。リニアは誘致するが、北陸新幹線は「費用対効果が合わない」と否定的だ。

 門川氏は1993年の市基本計画で掲げていた地下鉄東西線と洛西ニュータウン、長岡京市を結ぶ「環状線構想」を、自動運転などの新交通システムなどで実現させるとしている。すでに国や府と調整に入っており、「宇治市や長岡京市など京都全体の発展につなげる」とする。リニア誘致と北陸新幹線の延伸には積極的だ。

景観

マンションが立ち並ぶ京都市中心部。高さ規制の見直しも争点になりそうだ(小型無人機から)

 市は建物の高さやデザインを規制する景観政策の見直しに着手している。導入から12年が過ぎ、ホテル需要で地価が高騰した市中心部などでオフィスや住宅が不足し、子育て世帯が市外に流出する課題が顕在化。「生きた都市」としてのまちづくりと景観保全のバランスが課題だ。

 門川氏は、「京都の景観の守るべき骨格は堅持する」としつつ、市周辺部の高さ規制の考え方などを記した地域ビジョンの策定を進め、「地域ごとの特性に応じた都市機能を誘導して住居や働く場を創出する」と主張。規制緩和の対象地域として、山科や竹田、桂川、洛西地域などを例示している。

 これに対し、福山氏は京都の歴史的な景観を堅持すべきという立場だ。京都大の立て看板問題で話題になった屋外広告物条例の一律的な規制は見直す。門川氏が都市計画変更などの手法で個別に高さ規制を緩和してきたことに「ホテル誘致で投機マネーを誘発してオフィス不足と人口流出を招いた」と批判する。

 一方、村山氏は景観政策を「無計画な規制で、若者の住む場所や働く場所がなくなる一因になった」と批判。高さ上限31メートルの御池通や烏丸通から1本中に入った通り沿いで規制緩和を進めるなど、市中心部も例外としない姿勢だ。福山氏の「堅持」方針には「経済的な効果を全く考えていない」と疑問を呈する。

観光

 

 立候補を予定している3人は、いずれも宿泊施設の立地抑制に意欲を示すが、主張には濃淡がある。福山氏と村山氏が客室数に上限を設ける総量規制を掲げる一方、門川氏は総量規制には否定的で、立地手続きの強化などで宿泊施設の進出に歯止めをかけようとしている。

 門川氏は観光産業が市内に及ぼす経済波及効果が1兆4千億円に上るなどメリットを強調する。課題解決に向け、全宿泊施設にバリアフリー基準の強化を義務づけることで施設数の抑制につなげるなど、50の取り組みを打ち出した。

 福山氏は宿泊施設が進出できない地域でも特例で認める「上質宿泊施設誘致制度」を廃止するほか、全施設に管理者常駐を義務づける。観光振興が地域経済の活性化につながっていないとして、市民生活優先の観光への転換を訴える。

 村山氏は市バスの混雑解消に向けて、地下鉄との乗り継ぎ無料化などを打ち出す。大手資本中心の「稼ぐ観光」に否定的な福山氏とは対照的に、さらなる観光客誘致には意欲的で、市民の不満を解消した後に年間6千万人を目指すとした。

観光客などで市バスを待つ長い列ができる金閣寺近くのバス停(2019年10月、京都市北区)