トランプ米政権が呼びかける構想に参加するかどうか以前に、日本がやるべきことはないのか。

 中東・ホルムズ海峡を航行する船舶を警護する有志連合構想を巡り、イランから遠く離れたイエメン沖に自衛隊を派遣する案が政府内で浮上しているという。

 日本とも友好関係にあるイランに接するペルシャ湾への派遣を避け、同時に有志連合構想への参加を傍観しているとの批判もかわそうという狙いのようだ。

 航路の安全確保には、日本も積極的に関わっていく必要がある。

 ただ、「何もしないわけにはいかない」という後ろ向きの理由で自衛隊を動かそうというのなら、あまりに主体性を欠いている。

 遠く離れた地域であっても、自衛隊に新たな任務を担わせて派遣すれば、日本に対するイランの姿勢は大きく変わる可能性がある。

 日本の立ち位置をふまえ、冷静に対応しなければならない。

 政府の想定では、イランから2200キロ以上離れたイエメン沖・バベルマンデブ海峡の海域に護衛艦などを出して情報収集や警戒監視にあたるという。

 実際には、海賊対処法に基づいてアフリカ東部アデン湾で活動している自衛隊の活動区域を変更する案が有力だという。国会の事前承認が不要で、首相判断で対応できることが、その理由とされる。

 だが、6月に起きたタンカー攻撃では積み荷が奪われておらず、海賊行為と認定しにくいとの指摘がある。海運業界から政府に対して自衛隊派遣要請もない。

 現状では、海賊対処法を派遣の根拠とするには疑問が残る。

 政府は、自衛隊法による海上警備行動を根拠法にする検討もしているというが、人命保護など「特別の必要がある」との要件に該当しないとの声もある。

 現状をよく分析し、派遣が本当に必要かよく見極めるべきだ。

 そもそも、中東の緊張は米国がイラン核合意から一方的に離脱して経済制裁を復活させたことに端を発する。イランもウラン濃縮などで対抗し、対立が深まった。

 トランプ氏との親密さを誇示する安倍晋三首相は6月にイランを訪問し、最高指導者と会談した。本来なら、両国に緊張緩和を促すことができる立場にあるはずだ。手をこまねいている場合なのか。

 ペルシャ湾を避ける形での自衛隊派遣論は、米国とイランの双方に説明が付くことを最優先にしているように見える。外交不在と言われても仕方ない。