就職情報サイト「リクナビ」を運営するリクルートキャリアが、就職活動の内定辞退率を企業に販売していた問題で、東京労働局が調査に乗り出した。

 就活の学生から集めた個人情報を本人の同意なしに使ったことが、職業安定法の指針違反となる恐れがあるためだ。

 本人の知らないところで、内定判断の材料にされていたら由々しい問題だ。学生たちに不安を抱かせた責任は重い。

 個人情報をめぐる意識や取り扱いが、インターネット社会の進展に追いついていないのが現状だ。データ活用が期待される中で、個人の権利をどう守るのか。2020年の個人情報保護法改正に向け、議論を深める必要がある。

 リクナビは、登録した就活生の企業の閲覧履歴や志望動向など大量のデータを、人工知能(AI)で分析、内定辞退率を推計し、企業に400万~500万円で売っていた。

 昨年3月に始めたが、7983人の学生からは適切な同意を得ていなかったと発表している。ほかの学生には「表現が伝わりにくかったが同意を得た」というが、どれだけ理解されたか分からない。

 個人情報保護法は、第三者に個人情報を提供する場合、事前に本人同意が必要だが、情報の中身や提供先はほとんど明示されない。同意は形式的になりがちだ。

 リクナビは提供した38社から、合否判定にはデータを活用しないとの同意書を取ったという。ただ、就活状況は「売り手市場」で、いくつも内定を得た学生が多い。辞退率の情報は貴重で、使わないとの同意を守ったかは不明だ。

 ほかの同業サイトも辞退予測ツールを企業に提供しているという。提供された企業側も、個人情報の取り扱いルールを守る責任を認識すべきだろう。

 個人データは、集積や分析によって、医療や福祉などさまざまな分野で活用が見込まれている。一方で、ネットの閲覧履歴から個人の趣向、人物像を分析して、広告や販売に使い、巨大な利益を得る動きが世界規模で広がっている。

 欧州連合(EU)がつくった一般データ保護規則は、こうした個人データの利用に異議を申し立てる権利を定めたものだ。

 ようやく日本でもネットと個人データをめぐる議論が出てきている。個人情報保護法が求める同意にも目を向けて、分かりやすい内容に改善すべきだ。同時に、ネットの利用者自身が個人情報についての意識を高める必要がある。