終戦の日に行われた政府主催の全国戦没者追悼式で、最年少の献花者となった滋賀県の中学生は、フィリピン・レイテ島で戦死した曽祖父のことを思っていた。

 「亡くなった人や、戦争でつらい思いをした人のことを考えたい」とも話す。参列が契機となったのは間違いなかろう。追悼式では、この中学生を含む12~17歳の6人が青少年代表として献花し、9~17歳の14人が花を渡す補助役を務める段取りだった。

 終戦から74年が経過し、風化が懸念される戦争の記憶を次世代に継承するには、こうした機会を生かしていくしかなさそうだ。

 今回は、平成から令和に時代が変わって、初めての追悼式となった。戦後生まれの天皇陛下が、即位して初めて臨み、お言葉を述べられた。

 どのような思いを語るのか、平和を願い続けた上皇さまの姿勢を引き継がれるのか、耳を傾けた方も多いはずだ。

 戦時中、疎開を経験した上皇さまは、一貫して犠牲者に哀悼の意を表し、遺族を慰め、非戦を願ってきた。

 節目となった戦後50年からは、「戦争の惨禍が繰り返されぬことを切に願い」と語り、戦後70年には「深い反省」との文言を盛り込んだ。

 11歳で終戦を迎えたため、「苦難に満ちた往時をしのぶとき」と振り返っていた。この箇所を、陛下は「多くの苦難に満ちた国民の歩みを思うとき」に変え、戦時の混乱を体験していない世代の発言であることを明確にした。

 そのうえで、「深い反省」はじめ、上皇さまの思いのこもった表現については、そのまま踏襲した。平和を求める「象徴」の立場を、しっかりと引き継いだのではないか。

 過去の記者会見で、陛下は「戦争を体験した世代から戦争を知らない世代に、悲惨な体験や日本がたどった歴史が正しく伝えられていくことが大切」と語っていた。

 追悼式を、そのためのよい機会としたようだ。

 一方、安倍晋三首相は今回の式辞で、広島・長崎の原爆投下や沖縄の地上戦による犠牲者に初めて言及したものの、「反省」の文言を使わず、アジア諸国への謝罪は7年連続で盛り込まなかった。

 「戦争の惨禍を二度と繰り返さない」といくら強調しても、多くの人の心に響かないだろう。