犯罪被害者からの電話相談に応じるスタッフ(大津市・おうみ犯罪被害者支援センター)

犯罪被害者からの電話相談に応じるスタッフ(大津市・おうみ犯罪被害者支援センター)

 犯罪被害者らを支援するため、県内の全19市町が制定している条例に基づく見舞金の利用が低調だ。認知度不足などから、施行後15年近くたっても実績ゼロの自治体が複数ある。京滋で今年相次いだ重大な事件や事故で支援の重要性が高まる中、民間団体からは支給要件を緩和するなどの見直しを求める声が出ている。

 19市町は精神的な被害軽減を目的に、犯罪被害者等支援条例で見舞金の支給を定めている。各市町によると、2016年度から3年間の支給実績は長浜市の2件が最多で、大津、草津、湖南、米原の4市が各1件にとどまる。甲賀、東近江両市は条例施行から15年近くになるものの、実績はゼロという。

 利用が低迷する一因には、行政による周知不足がある。専門職は置かず、防犯担当の職員が兼務する最小限の体制が多い。甲賀市の担当者は「女性の被害者が男性職員に相談しづらいケースもあるのでは」と話す。

 県警は、支援要員の警察官に対し、該当する被害者には支援制度を案内するよう研修しているが、現場でどこまで徹底できているか把握していないという。

 傷害については支給要件が厳しいとの声がある。「医師の診断で全治1カ月以上」と定義され、警察が重傷として扱うけがが基準。県警の統計上は刑法犯の約1割(17年)を占めるが、県内唯一の相談窓口である公益社団法人おうみ犯罪被害者支援センター(大津市)によると、寄せられた相談のほとんどが全治1カ月未満。支援の実効性を高めるには、負傷程度に応じた支給基準を設けるべきと指摘する。

 対する自治体側は「予算の制約がある」として、支給拡大につながる見直しには難色を示す。一方、大津市は治療に時間がかかる心のケアについて傷害見舞金の対象に含めることを検討している。

 被害者は本来、加害者側に損害賠償を請求できるが、加害者が裁判所の支払い決定に応じず泣き寝入りを強いられることが少なくない。どこからも補償を得られず経済的に余裕のない中で、被害者が治療費を自己負担している事例は県内でもある。同センターの三原貴子事務局次長は「被害者が損をすることがないよう、現実に即して救済できる制度にしてほしい」と訴える。

 さらに制度のはざまで取り残されているのが、生活保護を受ける被害者だ。見舞金は「収入」とみなされ、生活保護費が減る。松村裕美支援局長は「見舞金は生活費の支援ではなく、被害に対する慰謝料。災害時の義援金と同様、収入から除外すべき」と指摘。支援政策に詳しい京都産業大の新恵里准教授(被害者学)も「当面の生活に困窮する被害者もおり、被害者にとって使いやすい制度が望ましい」と強調する。