中国政府が香港への武力介入を辞さない姿勢をくり返し表明している。

 香港に隣接する広東省深セン(センは土へんに川)に武力警察を集結させ、大規模なデモ制圧訓練を展開している。その規模は11個師団、1万人以上になっている。

 香港から中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案に反対するデモは収束するどころか、活発化している。

 中国政府の姿勢は、香港の民主派への有形無形の圧力だが、武力介入は流血の事態を招く。強硬措置は回避すべきだ。

 デモ隊の抗議行動は、香港国際空港を一時、占拠する事態にも発展した。第1の原因は、市民との対話を拒否している香港政府にある。

 条例案については、6月に大規模な抗議デモが行われた後、林鄭月娥行政長官が事実上の廃案にすることを明らかにした。

 しかし林鄭氏は法案の完全撤回や辞任は受け入れず、抗議活動が長期化する原因になっている。

 中国では、一党独裁体制や人権抑圧に異を唱える弁護士らが長期間の拘束を受けている。逃亡犯条例改正案が可決されれば、中国に批判的な香港の活動家が本土に送られ、不当な扱いを受けかねない。法案が復活する可能性がある限り、市民が反発するのは当然だ。

 香港の行政長官は民主的な選挙を経て選ばれるわけではない。親中国派による委員会が選び、中国政府が任命権を持つ。

 とはいえ、香港の最高権力者であることに変わりはない。林鄭長官は市民との対話に応じることで、中国の武力介入を防ぐ責任がある。

 武力介入は、香港の高度な自治を認めた一国二制度の崩壊を意味しよう。それは中国政府にとっても大きな損失になる。

 香港は中国本土への投資の窓口となってきた。米国など、香港に優遇措置を認めてきた国も少なくない。武力介入はその地位を失墜させ、外国企業の撤退も加速するのではないか。

 中国は一国二制度を通じて得てきた巨大な利益を重視すべきだ。

 そもそも香港でデモや街頭での抗議活動が活発化する背景にも、注目する必要がある。政治に民意が反映される仕組みがないからだ。市民はやむにやまれず街頭に繰り出している。

 だからこそ、民主派のデモ隊は一般市民の幅広い支持を得られるよう、自制する必要がある。