東京電力福島第1原発で増え続ける放射性物質トリチウムを含んだ処理水を巡り、東電はタンクでの保管が2022年夏ごろに限界を迎えるとの試算をまとめた。

 原子力規制委員会は処理水を希釈して海洋放出するよう求めている。これに対し、風評被害を懸念する漁業関係者は反対している。

 タンクでの保管が難しいとなれば、海洋放出の主張に拍車がかかりかねない。処理水の処分を優先し、地域のなりわいを軽視していると地元に受け取られれば、対立は深まるばかりだろう。

 第1原発で保管中の処理水は7月末時点で約110万トンに上る。

 東電は20年末までに137万トン分のタンクを敷地内に確保する計画だが、現在のペース(1日当たり150トン前後)で処理が続けば22年夏に容量を超える計算だ。

 気になるのは、東電の対応だ。

処理水の処分方法を検討する政府の小委員会で、東電はタンクの大型化や敷地外への移送は困難と強調した。一方で、タンクにため続ければ、溶融核燃料(デブリ)の保管設備など廃炉に必要な施設の設置が難しくなるとした。

 敷地内のタンク容量が足りなくなる可能性を強調することで、海洋放出に向けた議論の加速を狙ったようにも思える。

 結論ありきの姿勢は不信感を増幅するだけだ。原発敷地内には土地造成で出た土砂の捨て場が確保されているといい、「安全な土を構内に保管し、処理水を外に出すのはちぐはぐ」との批判もある。

 小委員会は、海洋放出や地層注入など五つの処分方法を検討してきたが今回、漁業者から求めのあった「長期保管」も議題とした。

 処分方法を絞り込む前に、保管場所についてさまざまな可能性を多角的に検討する必要があろう。

 処理水を巡っては昨年8月、トリチウム以外の放射性物質が残っていたことが判明し、「トリチウム以外は除去できている」との東電の主張に疑いが生じた。

 放射性物質が残留していた理由は、しっかり説明できたのだろうか。疑問と不信感を残したままでは議論も進まないのではないか。

 福島県などの水産品を韓国が禁輸したことが世界貿易機関(WTO)の上級委員会に認められ、他に20以上の国・地域でも輸入規制が続いていることも気がかりだ。

 海外の消費者の抱く懸念が払拭(ふっしょく)しきれていない状況で、海洋放出を含む処分方法の検討を急ぐことが妥当かどうか。十分に考える必要がある。