低迷するマイナンバーカードの普及に、弾みとなるのだろうか。

 政府は国・地方の全ての公務員に本年度末までにカードを取得させるという。扶養家族も含め計700万人超に率先させる狙いだ。

 普及策として、健康保険証としての活用や、クレジットカードのポイントや航空会社のマイレージを買い物に使える「自治体ポイント」の上乗せも検討している。

 マイナンバーカードはICチップ内に個人を認証する機能を搭載し、本人確認が容易にできる。ただ、普及が進まないのは、取得することにメリットを感じていない人が多いからではないか。

 政府は6月、2022年度にはほとんどの国民がカードを持つと想定した対応方針を決めたが、8月8日現在の交付枚数は1755万枚、人口に対する取得率は13・8%にとどまっている。

 内閣府による昨年10月の調査でも、カードを「取得しておらず、今後も取得予定がない」が5割強に達した。その理由として「必要性が感じられない」が58%、「身分証になるものは他にある」が42%を占めた。回答者の4割はマイナンバー制度に「特に期待することはない」と冷淡だった。

 一方、「個人情報の漏えいが心配」は27%、「紛失や盗難が心配」も25%あった。プライバシー侵害への不安が拭い去れていないことも要因のように思える。

 政府は当初、マイナンバー制度の当面の運用は納税と社会保障、災害関連の3分野に限られるとしていたが、カードを使った利用の場は拡大される傾向にある。

 21年3月に本格化する健康保険証としての活用のほか、同年10月には過去の投薬履歴を見られる「お薬手帳」の機能も持たせる。

 オンライン確定申告では22年1月から前年の医療費が自動表示されるようになるという。

 こうした機能は病院などの人手不足に対応できる利点もあるが、個人情報の手がかりが集約されることへの抵抗感は根強い。

 カードを持つ必要性に乏しく、個人情報流出のリスクもある。こうした懸念があるうちは、ほとんどの国民がカードを取得するという想定は架空の前提でしかない。

 マイナンバー制度は導入の初期投資に2700億円、運用に毎年300億円が必要とされる。巨費に見合う効果を実現しようとするあまり、サービス活用を急ぎすぎていないだろうか。カードの取得は本当に安全なのか。政府は納得できる説明を尽くすべきだ。