日米安全保障条約の署名から60年を迎えた。

 米軍の日本防衛義務を明確にした1960年の条約改定時は国会承認が強行され、激しい安保反対の運動が起きた。

 アイゼンハワー大統領が訪日できなくなり、安倍晋三首相の祖父である岸信介首相も退陣した。

 戦後の日本の平和と繁栄をみると、結果として安保条約はプラスに作用したといえる。

 日米安保体制によって、日本は防衛費を抑えることができ、予算を産業振興や社会資本の整備などに投入できた。

 日本が軍事大国の道を歩まなかったことで、アジアの国々は脅威と感じずに済んだ。地域の平和と安定に与えた影響は小さくないだろう。

 安倍首相は年頭会見で安保条約に触れ「今なお外交安全保障政策の基盤だ」と強調した。

 だが日米同盟は新たな試練に直面し、安保体制は転換期を迎えているようだ。

 米国は「世界の警察官」を辞めると宣言し、中国は軍事力を増強、北朝鮮は核開発を続けてきた。東アジアの安保環境が激変する中、日米同盟も変容を迫られる可能性が高い。

 「米国第一」を掲げ同盟関係を軽視するトランプ大統領は、「不公平」と非難し、日本に一層の負担増を要求している。

 署名60年に合わせて「日本の貢献が増え続け、同盟が発展し続けることを確信している」との声明を発表した。

 在日米軍は米国にとってもアジア太平洋戦略を担う重要な存在である。いずれの国だけが利益を受ける枠組みではなく、不公平には当たらないことを理解するべきだ。

 トランプ氏の言動にはリスクがつきまとうが、日米安保の重要性は今後も変わらない。同盟を維持し、時代に適合するものにしていく必要がある。

 これまでに築いた関係を見つめ直し、意義と在り方を真摯(しんし)に考える姿勢が大切だ。

 安保体制は当初は米ソ冷戦構造に組み込まれた。湾岸戦争や朝鮮半島危機を経て、1996年の日米安保共同宣言で同盟の目的を「アジア太平洋地域の安定的繁栄」に再定義した。

 その後も米国戦略に関与を深め、日米防衛協力指針(ガイドライン)の改定、さらに2015年には安倍内閣による安保関連法が制定された。

 集団的自衛権行使を解禁し、地理的な制約なく米軍後方支援を可能とした。自衛隊と米軍との協力はサイバーや宇宙分野にも及んでいる。

 ただ国内世論では米軍との一体化が進むことへの反対は根強く、米国の戦争へ巻き込まれるとの懸念は拭えない。

 同盟を深化させる一方で、中国や北朝鮮の動向などの現実課題にどう対処するか。ただの米国追従ではなく、安定した国際秩序を築くための外交力が求められよう。

 沖縄県に米軍基地の負担が集中する構図は変わっていない。

 米兵の法的地位などを定めた日米地位協定の抜本的な見直しを含め、沖縄の過重な負担を軽減する努力が必要だ。