本で紹介されている高齢女性(故人)宅の納戸。洋服が詰まったたんすや箱が所狭しとある

本で紹介されている高齢女性(故人)宅の納戸。洋服が詰まったたんすや箱が所狭しとある

本で紹介されている妻に先立たれた男性宅。台所周辺からは大量の調理器具や掃除用具が出てきた

本で紹介されている妻に先立たれた男性宅。台所周辺からは大量の調理器具や掃除用具が出てきた

「既存の整理ブームの視点ではなく、老いにスポットライトを当てた」と話す西山さん、川口さん、溝内さん(左から)=京都市中京区・コンシューマーズ京都

「既存の整理ブームの視点ではなく、老いにスポットライトを当てた」と話す西山さん、川口さん、溝内さん(左から)=京都市中京区・コンシューマーズ京都

 自宅の整理は気力、体力がある60代前半から。老後も自立して暮らすための片付けを提案する本「老いる前の整理はじめます!」をNPO法人コンシューマーズ京都(京都市中京区)が出版した。終活や福祉の観点から住環境を考える。

■押し入れやたんす、物でいっぱい

 贈答文化や経済成長を経て、家に物が大量にたまっていることが少なくない。片付いているようでも、押し入れやたんすは物でいっぱいということも。

 本は、80~90代の高齢者宅を写真とともに紹介する。納戸や2階に衣類や布団、贈答品が詰め込まれ、体力の衰えとともに自分で1階に下ろしてごみに出すことができなくなった事例や、妻に先立たれた夫が妻の着物や日用品の処分の判断がつかず、整理できなかった事例もある。

 執筆メンバーの大阪健康福祉短期大教授の川口啓子さんは「70歳から片付けるという人もいるが、そのとき脚立に上れるのか、体が元気なのかは分からない」と話す。物が多いと、介護が必要になった際に車いすが通れなかったり、家族やヘルパーが掃除しにくかったりと、支障にもなる。

 本は、物の整理について、「単純に量を減らすことだけが目的ではない。自分自身で管理できる量・質の『物』で暮らす生活習慣を身につけておく-それを目的にした整理」と定義、60代の早くから始めることを勧める。自らが生活をマネジメントする主役になり、健康寿命を延ばし、認知症予防にもなるからだ。

 具体的には、お中元などを減らして物を売る・譲る▽買う前にストックを使い切る▽便利グッズは買わずに家にある代用品で済ませる-など。子どもにフリーマーケットアプリに出品してもらうことも一つのアイデアという。

 法人事務局の溝内啓介さんは「物の価値観は人によって違うので、しゃくし定規に全部捨てようというわけではないが、本人がいなくなったときに誰が整理するのかということも考えないといけない」と話す。生涯未婚率の上昇とともに、独身の子どもが親の介護と物の整理を一手に担うケースも増えるとみられる。

 遺品整理業者「メモリーズ」(堺市)の現場リポートや、「ごみ屋敷」の度合いを診断するチャートも掲載。事務局長の西山尚幸さんは「物をコントロールし、身の回りの環境を改善することが、豊かな老後の第一歩」と話す。クリエイツかもがわ刊、1620円。