2020年の東京五輪・パラリンピックに合わせ、国土交通省は羽田空港の国際線を増便するため、東京都心上空を通る新たな飛行ルートの運用を決めた。

 羽田の従来の発着は東京湾上空を通過している。五輪に向けた機能強化は重要だが、新ルートは人口密集地を通るだけに、安全の確保に最大限の努力をすべきだ。

 国交省によると、羽田の現在の発着回数は年間44万7千回に上るが、新ルートの運用により最大3万9千回増える。増加分は国際線に充て、首都の玄関口の輸送力を強化する。

 発着枠の拡大で外国人と日本人の旅客数が増え、消費の伸びなどで年間約6500億円の経済波及効果が期待できるという。

 具体的には、南風が吹く日の午後3時~7時に着陸用として使用する。都内では渋谷区や品川区などの上空千メートル以下を飛行することになる。国交省は14年に新ルートの計画を公表し、住民説明会や自治体との協議会を開いて環境整備を進めてきた。

 しかし、航空機からの落下物や騒音に対するルート周辺の住民、自治体の不安は根強い。

 品川区議会は今年3月、騒音や説明不足などを理由に、ルートの再考を求める決議を可決した。渋谷区議会も都心低空飛行計画の見直しを求める意見書を決めており、政府は重く受け止めなければならない。

 国交省は騒音軽減策として、着陸に向けた進入角度を3・0度から3・5度に改めるとしている。角度の変更で新宿駅付近の飛行高度は約910メートルから1030メートルになる。古くて騒音が大きい機体の着陸料引き上げや就航制限、羽田から6千キロ超の長距離路線は低騒音の機種に限るなどの対策も取るという。

 ただ、航空関係者からは進入角度の引き上げで「操縦の難度が増し、尻もち事故の危険がある」との指摘もある。

 国交省は協議会を通じて地元の理解は得られたとして、小型機を実際に飛ばして空港設備をチェックする「飛行検査」に着手し、航空会社への発着枠割り振りの議論を加速させる。各社が夏ダイヤに切り替える来年3月29日に新ルートの運用を始める予定だ。

 国内には大阪や福岡など市街地に近い空港がある。国交省は他の空港でのケースを参考に、安全、騒音対策にさらに力を入れ、住民や自治体に丁寧に説明していく必要がある。